シュリーマン旅行記 清国・日本

シュリーマン旅行記 清国・日本」を読みました。小説家、山本一力氏の推薦です。シュリーマンといえば、ホメロスの「イーリアス」に感動し、自弁でトロイアの遺跡を発見した偉人です。高校生の頃、課題図書「古代への情熱」を読んだ記憶があります。最近は、あまり評判がよくないようで「…子供の頃からトロイアに関心があったとか、語学の天才だったとか、自伝に書いてあることはほとんど嘘で、金にあかせて売名をした成果としてその名声がある」(はてなより)そうです。
それでもこの旅行記は名著です。特に日本人にとってはかけがえのない名著です。明治になる直前の日本・中国を活写しています。日本人を語る人には必読の書だと思います。訳者の石井和子氏に深く感謝いたします。備忘します。

シュリーマン旅行記 清国・日本 (講談社学術文庫 (1325))

シュリーマン旅行記 清国・日本 (講談社学術文庫 (1325))

日本人が世界でいちばん清潔な国民であることは異論の余地がない。(P.87)
「なんと清らかな素朴さだろう!」初めて公衆浴場の前を通り、3,40人の全裸の男女を目にしたとき、私は叫んだものである。…彼らが浴場を飛び出してきた。誰かにとやかく言われる心配もせず、しかもどんな礼儀作法にもふれることなく、彼らは衣服を身につけていないことに何の恥じらいも感じていない。その清らかな素朴さよ!(p.88)
…大理石をふんだんに使い、ごてごてと飾り立てた中国の寺は、きわめて不潔で、しかも退廃的だったから、嫌悪感しか感じなかったものだが、日本の寺々は、鄙びたといってもいいほど簡素な風情ではあるが、秩序が息づき、ねんごろな手入れの跡も窺われ、聖域を訪れるたびに私は大きな歓びをおぼえた。(P.104)
…他の国々での経験とは反対に、日本では右側から馬に乗ることになっている…(p.120)
日本の宗教について、観察してきたことから、私は、民衆の生活の中に真の宗教心は浸透しておらず、また上流階級はむしろ懐疑的であるという確信を得た。(p.141)
…彼らに対する最大の侮辱は、たとえ感謝の気持ちからでも、現金を贈ることであり、また彼らのほうも現金を受け取るくらいなら「切腹」を選ぶのである。(p.146)
日本人に対する最大の侮辱は、白装束で訪ねることである。家長が死ぬとすぐに日本人は表札の上に白い紙をかけ、彼の名を覆う。(p.175)