宮沢賢治の真実

宮沢賢治の真実」を読みました。宮沢賢治については、「雨二モマケズ」と「永訣の歌」くらいの知識しかありません。宮沢賢治は農業の先生で田舎のインテリくらいの認識でした。「銀河鉄道」については童話のわりに難解な内容だとの印象はありますが、あらすじもよく覚えていません。本書を読んで宮沢賢治の出生から家族のこと、身の処し方まで知ることができました。もちろん各作品の内容も。友人との同性愛に悩んだこと、妹の悩みを知り驚き嘆いたことを知りました。宮沢賢治は修羅と化し難解な文語詩を残しました。この文語詩解明がこの本の主題です。丹念な資料の読み込みと現地調査、仮説と検証で作品を解説しています。素晴らしい論考です。百年前の、或る日の天候や星座、景色まで調べて作品との関連を明らかにしています。まるでミステリーを読んでいるように面白く読めました。作者に深く感謝します。謎の文語詩を備忘します。

宮沢賢治の真実 : 修羅を生きた詩人

宮沢賢治の真実 : 修羅を生きた詩人

猥れて嘲笑めるはた寒き 凶つのまみをはらはんと
かえさまた経るしろあとの、 天は遷ろふ火の鱗。
つめたき西の風きたり、 あららにひとの秘呪とりて、
粟の垂穂をうちみだし、 すすきを紅く耀かす。

超文章法

「超文章法」を読みました。副題は「伝えたいことをどう書くか」です。新しい本だと思って購入しましたが、出版は2002年で13判を数えるベストセラーでした。いちいちごもっともです。当時はまだパソコンで文章を書くことが常識ではなかったようで笑えました。ウェブライティングの基本にあたることがたくさん盛り込まれていました。勉強になりました。備忘します。

「超」文章法 (中公新書)

「超」文章法 (中公新書)

文書の目的は読み手を感動させることではない。読者を説得し自分の主張広げることだ。そのためには、内容が有益であり、読者が興味を持って読み始めものでなければならない。さらに、容易に理解可能なものでなければならない。つまり、目的は、「ためになり、面白く、分かりやすい」文章だ。こうした目的のために、マニュアルが果たす役割は大きい。ページ4
第一は、メッセージの明確化だ。「メッセージ」とはどうしても読書に伝えたい内容である。それは、一言で言えるものでなければならない。文章が成功するかどうかは、8割がたこの段階で決まる。第二は、骨組みの構築だ。ページ6
「面白いかどうか」は、食べ物で言えば「おいしいかどうか」である。論述文における面白さは、多くの場合、謎解きと発見の面白さだ。つまり、好奇心を呼び起こし、それを満たしてくれることである。ページ43
一文一意主義が良いと言われる。賛成だ。私は、もう少し進めて、一パラグラフ一意主義をとるのがよいと思っている。つまり、ひとつのパラグラフに異質な内容盛り込まないほうがよい。ページ90
始めが重要なのは読者を惹きつける、読んでもらうためだ。読む価値があることを、始めの数行で読者にアピールする。読者を感激させるも何も、読んでもらえなかったそもそもどうにもならないのだ。ページ100
文章の終りが重要である。最後から読む人もいるからだ。また、読者の印象は、最後の箇所に依存するところが大きい。ページ114
普通の叙述では、まず具体例を述べ、「これを一般化すると、次のようなことが言える」とするほうがわかりやすい。特に、一般化した命題があまり知られてない場合は、そうである。ページ130
「私は」と書いてある論文は信頼できることが多い。ページ139
文章読本は「削って削って削りまくれ」と述べている。このアドバイスは多くの場合に正しい。削りまくった結果何も残らないとしたら、メッセージがない証拠である。ページ163
一つの、パラグラフの中で論理を反転する接続詞が現れるのは、望ましくない。これらの接続詞は、パラグラフの先頭に来るのが良い。ページ171
私が特に目の敵にしているのは、「さらなる」だ。「一層の」とい意味で使われているのだがこれは誤用である。ページ220
始めれば完成するというのは全く魔法のようなものである。しかし、経験してみればわかるとおり、多くの場合に真実である。ページ230
以上のことを、「現役効果」と呼ぼう。仕事開始、その仕事に関して現役になっていれば、外界からの刺激に反応する度合いが強くなるのである。ページ232

弱いロボットの思考

「弱いロボットの思考」を読みました。前著もよくよんでいましたし、テレビの番組でも何度もみていましたので、先生の考えは素直に読めました。コミュニケーションの本質に迫る議論です。ルンバの不完全さがかえって親しみをもって迎えられたというのは、実際に使ったときの実感です。その通りです。備忘します。

知性のありかとして私たちの頭の中ではなく、むしろ体と環境とのかかわりそのもの、いわゆる身体性ということがにわかにクローズアップされることになる。例の行き当たりばったりとも思えたお掃除ロボットの行動にも、もう少し深い意味が隠されていたということだろう。なぜ私たちは周りに委ねようとするのか、なぜ自らの中で完結させようとしないのか。ページ58
「不完結な言葉は、内的説得力を持つ」のだという。わずかでも「生きた意味」が備わっていたとすれば、それは他にそっとゆだねるようなスタンス、そして他社との調整の余地から生まれてきたものなのだろう。発話の「不完結さ」や本源的な「弱さ」が聞き手とのあいだでリアルなカップリングを生み出すようなのである。ページ120
アシモと私たちの間にある共通したものは? その身体的な共通基盤とは? そうしたことを考える上で、単に「人型である」「二速歩行する」というだけではなく、この「ドキドキしつつも地面を味方にして歩く」という行動様式やその背後にある不完結さにも目を向けておきたい。私たちのお掃除ロボットに対する共感も、周囲を味方につけながら…という<委ねる>⇆<支える>の行動様式に起因しているようなのである。ページ131
私達のコミュニケーションの基底にある身体的な基板ということについて考えてみた。何気なく歩く、何気なく話す。自らの内なる視点から発語や行為を繰り出す際に、その意味合い役割を完結できない。そうした不完結さや弱さを内包した体は、ドキドキしつつも他に委ねつつ、一緒に行為を生み出していくという方略を選びとっていた。それを一方で支えている他社もまた然りである。ページ147

新シニア市場攻略のカギはモラトリアムおじさんだ

「新シニア市場攻略のカギはモラトリアムおじさんだ」を読みました。私はモラトリアムおじさんではありません。でも目標や目的を失ったモラトリアムおじさんたくさんいます。マーケッターとしてはここにターゲットをさだめて狙い撃ちは正解だと思います。備忘します。

新シニア市場攻略のカギはモラトリアムおじさんだ! ―――ビデオリサーチが提案するマーケティング新論II

新シニア市場攻略のカギはモラトリアムおじさんだ! ―――ビデオリサーチが提案するマーケティング新論II

アクティブシニアとは、シニア世代の増加と団塊世代の大量退職が注目され始めた2000年頃から登場した概念だ。…シニアのグループの分類の中で、こうしたアクティブシニアのイメージに近い人の割合を先にご紹介すると、全体の2割もない。ページ83
そして今回、私たちが最も注目したのが…「セカンドライフモラトリアム」と名付けたグループである。…セカンドライフモラトリアムは変化や刺激を求めていながら、つまり、現状変えたいという意識あるにもかかわらず、どうすればいいか、どう変えればいいのかがわからないというグループである。ページ105
セカンドライフモラトリアムに特徴的なのはとまどいの強さだ。男性は仕事以外の人間関係が希薄で、誇りや成功の基準を企業名やポジション、年収などに置いていたため、名刺がなくなってしまったこと、手帳のスケジュールが真っ白であることが不安だという。情報収集意欲は高く、考えも決して保守的でなく、社会人として頑張ってきたのだが、そこから解き放たれた現在、どう過ごせばいいのか分からなくなっている。ページ126
そんなセカンドライフモラトリアムの男性を、ここからは親しみを込めて「モラトリアムおじさん」と呼ぶことにしよう。彼らの背中をうまく押すことができれば、シニア市場は間違いなく活性化するはずだ。私たちの研究では、モラトリアムおじさんの本音では、変わりたい、変わらなければならない、そのための消費や投資を惜しまないという気持ちを持っている。いずれにしろ真面目に会社を務め上げた人間だ。会社人間だったということは、少なくとも会社に適応して活躍していたのであり、経験やスキルなど様々な資産を持ってることは間違いない。ページ163

コロンブスから始まるグローバル社会1493

コロンブスから始まるグローバル社会1493」を読みました。コロンブスがアメリカ大陸を発見したことで、動植物や微生物の移動がおきました。名付けて「コロンブス交換」です。この「コロンブス交換」が世界史に与えた強烈なインパクトを分析しています。例えば中国やヨーロッパの人口増加は、アメリカ大陸のトウモロコシやジャガイモ、サツマイモの移転が大きな原因だそうです。インカ帝国の滅亡は、ヨーロッパやアフリカの伝染病の影響が大きいそうです。アメリカ大陸にはミミズもいなかったとか。特にアフリカ人、アジア人が移住することよって、メキシコで人種の混合が起きグローバル化が世界で初めておきたと指摘しています。また近代農業は鳥のフン、グアノから初まったとは驚きです。単一植物に頼る危険性も理解できました。とにかく歴史の見方が一変しました。良書です。備忘します。

1493〔入門世界史〕

1493〔入門世界史〕

西アフリカと中部アフリカ出身の成人のアフリカ人こそが、労働力確保の解決策だった。彼らは地球上の誰よりもマラリアにかかりにくかったのだ。それは現在でも変わっていない。ページ81
マラリア奴隷制を誕生させてたわけではない。しかし、マラリアは、奴隷制が必要とされる経済状況作り出す主因となった。たばこプランテーションの経営者は、アフリカ人がマラリアに免疫があると知っていて、彼らを利用したわけではない。初期の奴隷所有者が、マラリアへの抵抗性について何かを知っていたという証拠はないのだ。ページ82
人口が増加した地域の大半は、アメリカ大陸産の作物の栽培に当たっていた。新政府に中央部へ移住させられ者達も、飢えるわけにはいかない。彼らは来る日も来る日も、サツマイモととうもろこし、じゃがいもを食べ続けた。中国が世界一の人口を誇るようになった理由の1つには、やはりコロンブス交換が挙げられるのだ。ページ129
じゃがいもは同じく農業にも広範な影響与えた。ジャガイモの採用により、ヨーロッパと北米は大規模な近代農業、つまり、しばしば「工業型農業」と呼ばれるものを樹立したのが。ページ140
サツマイモととうもろこしの渡来により、中国の人口が爆発的に増えたように、じゃがいも導入から100年後には、ヨーロッパの人口は約2倍になった。ページ149
グアノの使用が、近代農業のモデルとなった。つまり、袋に入れられた栄養分を、畑にどさっと撒けばよくなったのだ。その栄養分は外国から船で運ばれてきたり、遠くにある工場で製造されたにしたものだ。農業とは、こうして入手した栄養分を畑に投入して収穫する、という行為になった。大量の窒素入れる。すると大量のとうもろこしやジャガイモは出てくるというわけだ。ページ155
スペインが中国と結ばれ、イタリアが日本と結ばれ、交易と秩序において、ついに世界は1つに結ばれる。メキシコシティーは、史上初の21世紀的都市ともいえるだろう。グローバル化された現代的な巨大都市の先触れだったのだ。ページ208

人はアンドロイドになるために

「人はアンドロイドになるために」を読みました。大阪大学のロボット学者、石黒浩教授の小説です。ロボット学者らしい知識や論理にあふれていますが、面白い小説ではありません。宇宙を解明するために生命があるとは思いません。私。

人はアンドロイドになるために (単行本)

人はアンドロイドになるために (単行本)

未完のファシズム

「未完のファシズム」を読みました。戦前の日本はファシズムだったのか? この答を知りたくて読んでみました。戦前の日本は明治維新以来、権力を集中させたと誤解していました。むしろ明治の元勲は権力を分散し、天皇をはじめとする個人に権力を集中できない仕組みをつくっていました。軍にも政府にも官僚にも絶対権力が生じないように巧みにつくられらシステムでした。大正、昭和に元勲たちが亡くなったあとにどうしてよいかわからなくなった。負ける戦争にも反対することができなかった! 戦前のファシズムは未完であったことを理解しました。明治の秀才たちは表向きの論理とは他に勝てない事実を知り苦悶していたことがよくわかりました。備忘します。

未完のファシズム―「持たざる国」日本の運命 (新潮選書)

未完のファシズム―「持たざる国」日本の運命 (新潮選書)

国家の20世紀化とは総動員体制国家化のことである。このような蘇峯の認識は、例えば、20世紀末に盛んに行われ、本日の学科にも影響力を保持してると思われる、山内による近代化と総力戦体制化とを直結させる議論のはるかの先取りであったようにも思われてくるでしょう。ページ37
日本人はついに第一次世界大戦に深く思いをいたすことがなく、大陸での利権だ、世界恐慌だ、第二次世界大戦だと目先に流されて、この国を一旦滅ぼしてしまった。ページ41
日本の軍隊は第一次世界大戦はあまりに学びすぎたが故に、傘そのような議論を百も承知の上で、極端な精神主義へと舞い戻ってゆかざるを得なかったのだと。ページ90
兵隊や兵器や弾薬が足らなくても当たり前だ、それで戦うのは日本陸軍の基本だと、完全に開き直っている。気力と創意工夫と作戦で補えばいかに劣勢でも勝てると大胆に主張する。ページ124
端的に言い直せば、政軍関係では政治を無視して軍の独断専行も辞さない。時間的には徹底的に速戦即決。兵站の心配をする前に戦いを済ませる。作戦面では包囲殲滅あるのみ。速戦即決するには疾風迅雷の勢いでの包囲殲滅戦が一番。大胆に染めて一気呵成に会戦を終わらせるには兵士の並外れた戦意が無論不可欠。よって極端な精神主義。もし包囲殲滅による速戦即決に失敗した時の方策はない。兵站に焦点の移る長期戦は持たざる国にとっては敗北を意味する。 ページ127
皇道派の将軍たちがしばしば統制派をアカ呼ばわりしたのにはそれなりの理由があります。統制派とは「組織統制派」であると同時に「統制経済派」でもあったのではないでしょうか。ページ178
「しらす」「うしはく」…しらすもうしはくも古い大和言葉です。どちらも国を治めるといった意味合いで使われました。「うしはく」は「横領の意のオシと掃討の義のハキとの複合で、本義は征略であるが…」つまりは強権政治をぴったり現す言葉でしょう。しらすは知らすである。上に立つものが己を鏡として、下の者たちにありのままを映し出す。…上に立つものは知ったことを改めて下に知らす。それが日本の政治だ。ページ219
このように明治の政治システム超法規的な、異常なものでした。憲法の仕組みとその背景にある「しらす」の思想だけ見ると、だれも力を持ってない形でできているけれども、実際は、だれも力を持てないシステムを作り出した維新の元勲、元老達の手で回せるようになっている。でも彼らの寿命が尽きたら、憲法だけ残ってあとは知らない、ということになる。事実、そうなってしまったのは大正から昭和なのでしょう。ページ224
ファシズムが資本主義体制における一元的な全体主義の1つの形態だとすれば、強力政治や総力戦・総動員体制がそれなりに完成してこそ日本がファシズム化したといえるわけでしょうが、実態はそうでもなかった。むしろ戦時期の日本はファシズム化に失敗したというべきでしょう。日本ファシズムとは、結局のところ、実は未完のファシズムの謂であるとも考えられるのではないでしょうか。ページ227
「持たざる国」の軍隊は分相応に速戦即決にてするべきだという酒井。「持たざる国」を「持てる国」にすべく経済力と科学力の増強に全力を尽くすべきだという石原。2人の意見は大きく違いましたが、反東條英樹の姿勢では一致していました。ページ306