利己的な遺伝子

利己的な遺伝子」を読みました。結構難しい本で10日ほど掛けて、ゆっくり読み終えました。私、生物の利他的な行動を見て生物の本質を見ようとしていました。ダーウィンの進化論が完成形に近いと誤解していました。覆されました。衝撃的な内容です。複製すること、そのものが生命の本質であり、個体とは別に、複製することを目的にDNAは存在していること、そのために利己的な振る舞いをすることが理解できました。私たち人間も遺伝子の乗り物(ヴィーグル)に過ぎないことを理解しました。似非生物学を振りかざすエッセイストによく読んでもらいたいものです。備忘します。

利己的な遺伝子 <増補新装版>

利己的な遺伝子 <増補新装版>

遺伝子の粒子性のもう一つの側面は、それが老衰しないことである。遺伝子は100万歳になっても、百歳のときより死にやすくなるわけではない。ページ48
個体は安定したものではない。はかない存在である。染色体もまた、配られて間もないトランプの手のように、まもなく混ぜられて忘れ去られる。しかしカード自体は混ぜられても生き残る。このカードが遺伝子である。遺伝子は交叉によっても破壊されない。ただパートナーを変えて進むだけである。ページ49
すなわち、遺伝子レベルでは、利他主義は悪であり、利己主義が善である。ページ52
…ライバルの死によって、当人よりも他のライバルたちのほうが得をするかもしれないからである。これは害虫防除の関係者たちによって学ばれた苦い教訓でもある。農作物がひどい虫害を受けたとき、より根絶法を発見し、喜び勇んでその方法施す。その結果はただ、その害虫の絶滅によって作物よりも別の害虫が勢いを得、前よりもいっそうひどい状態に陥るだけなのだ。ページ99
男性が将来にわたって誠実さを守ることを何らかの形で証明しないうちは、女性は純潔を守るべきだという意見は常識的な感情に訴えるだろう。これは、人間の女性がたくましい雄を選ぶ戦略ではなく、家庭大事の雄を選ぶ戦略のほうを採用していることを示唆しているのかもしれない。事実、ほとんどの人間社会は、一夫一婦制をとっている。ページ250
そもそも遺伝子の特性とはなんなのだろうか。自己複製子だということがその答えである。…すべての生物自己複製を行う実態の生存率の差に基づいて進化する、というのがその原理である。自国複製を行う実態として我々の惑星に勢力を張ったのが、たまたま、遺伝子、つまりDNA分子だったというわけだ。ページ296
問題の全体を整理する1つの方法は、自己複製子と乗り物(ヴィーグル)という用語を使うことである。ページ396
基本的には、我々の理論が予想しうるすべては、遺伝的な未来をめぐって、押し合い、だまし合い、戦いあう自己複製子たちの戦場ということにつきる。戦いにおける武器は表現型効果で、当初は細胞への直接的な化学的効果であるが、最終的には羽根、牙、そしてさらにもっと遠隔の効果にさえなる。ページ401
自己複製子とは宇宙にあるどんなものであれ、それからそのコピーが作られもののことだ。まず最初に、偶然によって、小さな粒子のランダムなひしめき合いによって、自己複製子が出現する。いちど、自己複製子が存在するようになれば、それは自らの複製を果てしなく作り出してことができる。ページ413