介護保険

介護保険」を読みました。介護保険が始まって数年後、03年の本ですが、当時の問題は解決していません。すなわち「地域格差」と「要介護認定」の問題です。突き詰めて考えれば、介護が充実している市町村に移住することはその人にとっては良いことですが、移住される市町村は介護給付で破産してしまう、という矛盾も孕んでいます。また、認定の甘辛で給付に大きく差が出ますが、認定度の決定権は市町村にあります。破産しそうな市町村は重度を認めなくなる可能性があります。備忘します。

介護保険―地域格差を考える (岩波新書)

介護保険―地域格差を考える (岩波新書)

こうして調査結果をまとめると、全国でも最高水準にある市町村から、最低水準に甘んじている市町村まで、バラつきを見せていることがわかる。つまり、介護サービスにおける地域格差とは、単に「素晴らしい市町村」と「全くダメな市町村」に二分されているわけではなく、上から下まであらゆるレベルに広く分布していたのである。(16ページ)
介護保険制度は言うまでもなく保険方式によって介護サービスを寄付しようとするものである。日本の介護サービスの歴史において、今回の保険方式への一本化は清めて大きな転換点になっている。…保険方式では利用者の相互扶助と自己責任が基本になる。…高齢者の介護サービスが保険方式による介護保険制度に一本化されたということは介護サービスに対する意識の転換を意味する。…介護保険制度の導入後は福祉として介護サービスを与えられるのではなく、利用者が自らの意思でサービス選び、自らのお金でサービスを購入する時代が訪れたのである。(22ページ)
介護保険料を例にとると、国からは「いくらでなくてはならない」という規定はなく、市町村ごとに条例によって金額を定めることになっている。保険料を算出する目安となる、介護サービスの供給量や水準を決めるのも、やはりそれぞれの市町村である。さらに、申請のあった高齢者の要介護度をどう判定するか、決定権を持っているのも市町村なのである。(37ページ)
…こうした深刻な地域格差が、現実に起こっているわけである。保険料に差があるとは言っても、それは金額にすれば月額数千円の話である。要介護認定の結果によっては、毎月10万円分の単位でサービス給付に差が出てしまう。要介護認定における地域格差の問題は今後ますます重要なものになっていくはずである。(46ページ)
したがって、介護サービスを評価する上で何よりも大切なのは、あなた自身が「介護サービスはどうあるべきかと考えているか」である。(146ページ)
「移住してくる方に、くるなすとは言えません。でも、町が高齢者ばかりになったら、はっきり言って迷惑です。介護移住などという言葉をできるだけ使わないようにして欲しいし、移住者の存在も公言してほしくありません」…介護保険の導入によって基本的なサービス内容については全国均一の基準が規定された。したがって、今後は介護移住をするまでもなく、標準的な介護サービスを受けられるように思われている。ところが実際には介護サービスの地域格差はますます拡大し、介護サービス=地域サービスとも言える状況にある。その意味からすればこれからの方がよりどこに住みどの市町村で介護サービスを受けるのかを選択すべき時代に差し掛かってると言えるだろう。(185ページ)