見切る!

「見切る!」を読みました。帯に「まだやれる、もっとやれるが会社を潰す」とありました。身につまされるフレーズです。超音速旅客機コンコルドは、高燃費、小座席数で、商業的な失敗は明らかだったにもかかわらず、それまでの研究開発費を惜しみ、1兆円を超える資金投入し続け挫折しました。同様に一般の会社ではPR効果の乏しいカレンダー配布をやめることができません。効果がはっきりしないから継続する会社が多いようです。「見切る」ことができません。リーダーは勇気をもってやめる決断(「見切る」)をするべきであり、できない人間が会社を潰すと述べています。変化に対応せよと強く迫ってきます。良書です。備忘します。★★★

見切る! 強いリーダーの決断力

見切る! 強いリーダーの決断力

日本電産の永守社長は「職場の整理の徹底が大きな効果をあげる」との発言をしている。整理はあらゆる仕事の見直しと経費削減の見直しともなるからであろう。…<だめな業務改善委員会の三大用語> 保留…この案は、よい案だが、時期尚早だから保留にしよう。 検討…この案はよい案だから、もっと検討する必要がある。 参考…この案は、よい案だから、今後の参考にしよう。(p.22)
ランチェスターの法則から、次のような二つの戦法の使い分けを提唱した。1.弱者の
戦法…マーケットシェアの小さい弱者は、強者と正面から戦うのを避け、局地戦で一騎打ちを挑む。 2.強者の戦法…マーケットシェアの大きな強者は、接近戦を避け、間接的、遠隔的な確率戦による総合戦を挑む。(p.32)
…評価ではなく「希少な戦力を、成果の見込めない仕事や、意味のない仕事から解放し、前向きの仕事に集中させるため」といった目的を明確にし、それが信用されなければならない。そういった試みを速やかに実行でき、またそれにより見切りを励行し、成果の上がらない仕事、意義がはっきりしない仕事から部下を解放してこそ、真のリーダーである。逆に、危険なリーダーは、新たな課題を連発し、仕事を増やす。(p.36)
もし、本当に危機と思うなら、上に立つ者が率先して、事業、商品、仕事、習慣など、すべてを抜本的に見直し、まずいと思う事項や、成果の伴わない仕事など、徹底的に見切るべきである。危機キャンペーンは、まず、上から面子、未練、希望的観測を捨て、ことなかれ主義と完全に訣別し、聖域なき見切りを断行することが先決である。…あれもこれも守ろうとすれば、力が分散され、危機打開のチャンスをものにできない。(p.46)
在来部門に優秀な部下を抱え込むミドルたちは、…斬新なアイデアの想像力に不足しているというよりも、出てきたアイデアを形にし、採算がとれる事業や商品にする組織力に劣っているように感じる。(p.111)
…ビジネスは、アイデアの優劣を競うアイデアゲームではなくアイデアを実現する優劣を競うパワーゲームである。そして、会社とは、経営者ひとりでは実現できないアイデアを、多数の社員が、役割を分担し、協力して実現するための組織である。すなわち、会社は「アイデアを生むため」ではなく「アイデアを実現するため」に存在する。(p.140)
ビジネスはギャンブルではないが、絶対に思うようにはいかず、また、いつ、どんな脅威に襲われるかもわからないハイリスクな行為である。そこでまずいと思えば素早く中止する「見切りの優劣」が、会社の存亡を左右するのであるが、それをわきまえずに、成長至上主義で積極果敢な成長戦略をとり、新たな事業やb商品にチャレンジする会社がある。それは潰れるために成長しているような発想であり、行動である。(p.157)
既存得意先の滞在時間を、…いままでの25%に減らしても、売上が変わらないことを意味する。(p.172)
…スタッフ部門を利益に貢献しない「コストセンター」と位置づけ、さしたる人材と権限を与えなければ、感情あっても銭足らずとなり、会社は潰れていくであろう。
(p.180)
…社員に年間計画どころか、3年先、5年先までの中期経営計画や長期計画まで、大変な手間ヒマをかけて作らせ、「計画書の作成」を成果と称し「計画は約束」だといって実行を迫り、計画と実際のかい離をあげつらうだけのトップやミドルは、馬鹿な指揮官そのものである。(p.202)
会社の経営で、大事なことは「やってはいけないことを知ること」である。…成功と失敗は紙一重と言われるが、多くの成功は、きわどい成功である。(p.204)
ビジネス世界では」、」まずいと判断すれば、失敗と認めて見切り、損失を限定して破滅を回避することが大事である。…これができないリーダーは「ノーと言わない、ことなかれ主義者」か、「ノーを許さない、必勝主義者」である。彼らは、言葉や行動がいかに勇ましく、知識や実績が豊富であっても、本質は臆病な、ダメリーダーであり、肝心なところで会社を危うくする危険人物となる。(p.216)