バースト!

「バースト!」を読みました。副題は「人間行動支配するパターン」です。ネットワーク論の俊才が人間行動の本質を探った著作です。 人間はランダム性に基づくポアソン分布で行動するのではなく、「ベキ法則」(突発的)に従っている、そしてベキ法則が成り立つところでは、「バースト」(爆発)が出現するという論です。その理由は「人の優先順位付け」だと喝破しています。痛快な論理展開です。ビッグデータの活用方法の理論的根拠になりうると思います。ネット販売や情報操作に精緻に利用できれば世界は変わると思います。奇数章は「バースト論」、現代科学の記述で、偶数章は16世紀、ハンガリーで起きた農民戦争「ドーシャの乱」が描かれています。ジェルジュ・セーケイの物語です(すごく面白い!)。一見関連のない二つの話が最後には結び付くドラマチックな構成になっています。備忘します。

バースト!  人間行動を支配するパターン

バースト! 人間行動を支配するパターン

1968年、アンディーウォフォールはこういった。「未来には。人は誰でも15分間だけ世界的有名人なれる。」この名言が一番現実に近いのは今だろう。この傾向を汲み取ったタイム誌は、2006年person of the yearに、「あなた(you)」を選出した… 15分間だけスポットライトを奪い取る一般人に魅了される世界に変えたのは、世界の無数の「あなた」なのである。今や「名声(fame)」は「名声ぽさ(fameness)」に取って代わられた。ページ68
人間がランダムに行動していないこと自体はさして驚くことではなかった。自分が偶然に支配されるとは誰だって思っていないからだ。人間はみんな自由意志を持っていて、それがあらゆる行動を…複雑にしている。だが何をするにせよ、われわれは無意識に同じ法則、ベキ法則に従っていたのである。簡単なことのようで、実はこれは驚くべきことなのだ。ページ156
すなわち、広大な領域に点在する乏しい食料を採取するのは、規則的な戦略もランダム戦略も最適ではないということだ。むしろ最善の方法は、バーストを含んだ探索パターンに従うことなのである。長距離を一気に移動すれば、別の遠い場所を探せるようになり、その一方で数多くの短いステップを踏んでいけば、直近にある食糧の大半を発見できる可能性が高苦なる。ページ236
科学はしばしば、それ自体がレヴィ飛行のパターンをたどる。飛躍的な前進をしたかと思うと、その後には小さな局所的な動きが延々と続いて、もうどこにも進めないのではないかと思わせ、場合によっては後退しているようにさえ感じさせる。しかし、これらは決してダではなく、新しいパラダイム境界線を手探りするために必要な動きなのである。ページ261
人間の予測可能性に関する限り、われわれはおなじみのポアソンガウスの世界に戻るのだ。そこでは誰もが同じで、全てが「正常」なのである。あなたが毎日何百キロと移動し、私はたった3キロしか移動しないとしても、あなたもわたしも自分の習慣の虜であることに変わりはない。ページ296
生命はよどみなく現れるわけでもランダムに現れるわけでもなく、バーストがあらゆる時間尺度を支配している。ページ351
重要な新しい知見は、人間行動には、驚くほど普遍的なボターン、バーストが見られるということだろう。バーストとは、短時間に何かが集中的に行われ、その前後に長い沈黙の時間が存在するというパターンのことだ。ページ407
さまざまなデータに共通して現れたのは、ランダム性に基づくポアソン分布ではなく、ベキ法則だった。そしてベキ法則が成り立つところでは、バーストの出現が予想される。なぜなら、ベキ法則が成り立っているということは、例えば「メールは立て続けに送信されることが多い」という状況と、何時間も送られていない空白期間がある」という状況とは、共存すること示しているからだ。ページ408
バーストは、優先順位付けと結びついてるのではないだろうか? 人生は時間との戦いだ。人は溜まった仕事を処理する際に、先着順ではなく、何らかの重要性に基づいて優先順位をつける。それがバーストを引き起こしてるのでは? 著者が実際にこのアイデアを組み込んだモデル作ってみたところ、見事バーストのパターンが現れたのだ。「ベキ法則&バースト」という普遍的パターン発見と「重要度に基づく優先づけ」モデルの提案は、ポアソン的なランダム性を脱却し、人間行動を捉える新たな枠組へのパラダイム転換だと述べることは、決して大げさではない。ページ409