たまたま

「たまたま」を読みました。事例の面白さに引き込まれました。直感とはずいぶん違うのに驚かされました。内容的には、諦観が底に流れています。努力に意味はあると言っていますが、世の中の成功者は「たまたま」であると考えているようです。救いもあります。逆にいうと、チャレンジの数が多ければ、成功の確率も必ずあがるものだということも意味していますから…。久しぶりの統計学で遠くから記憶を呼び戻すのに苦労しました。良書です。備忘します。

能力は成功の確率を増す要素の1つである。しかし行動と結果の結びつきは、我々が願うほど直接的ではない。だから過去を理解するのは容易ではないし、未来を予想するのもそうだ。ページ19
要するに、2つの独立した出来事A、Bがどちらも起きる確率を知りたい時は掛け算をする。それに対して、互いに排他的な2つの出来事A、Bのうちいずれか1つが起きる確率を知りたければ足し算をする。ページ56
限界はあるものの、ベルヌーイの黄金定率が一里塚であることに変わりはなかった。なぜならばその定理は、サンプルが量的に充分であれば、少なくとも原理的に、それが母集団の潜在的構成をほぼ正確に反映していることを明らかにしたからだ。ページ149
少数のサンプルが潜在的確率を正確に反映していると言う誤解、あるいは、誤った直感が、あまりにも広く行き渡っているから、カーネマンとドバイスキーはそれに名前をつけた。「少数の法則」というのがそれだ。ページ150
つまるところ、ベイズの理論は評価の方法と、新しいデータを考慮した評価の修正方法を示す理論である。ページ167
…確率と統計との基本的な違いである。つまり、前者は固定された確率に基づく予測に関するもの、後者は観測されたデータに基づく、それらの確率と推測と関わるものだ。ページ183
我々が成功とか失敗とかを目にする場合、われわれはたった1点のデータ、つまりベル曲線上の1点を観察しているに過ぎない。観察しているその1点が、果たして平均値を表しているか異常値を表しているのか、当てにできる出来事なのか、稀な出来事なのか、我々にはわからない。ページ212
…つまり、有意検定とは、もし今我々が限定している仮説が真実なら、どういう確率で特定の観察結果を得るかを計算する1つの手法である。もしその確率が低ければその仮説は棄却され、高ければ受諾される。ページ255
例えば2006年の「ザ・ニューイングランド・ジャーナルオブメディスン」誌は、変形性膝関節症の患者についての12,500,000ドルの研究結果を載せた。その研究は、グルコサミンとコンドロイチンと言う栄養補助サプリメントの組み合わせによる関節炎の痛み軽減の効果は、プラシーボ(偽薬)と変わらないことを明らかにした。ページ257
パターンを探し、何かパターンが見つかるとそれに意味を与える。それが人間の本姓だ。カーネマンとドバイスキーは、我々が不確かさを前にした時、データの中のパターンを評価し判断を下すために我々が使う多くの簡便な手法を分析した。2人はそうした簡便方法を「ヒューリスティックス」と呼んだ。ページ258
…自分自身の生活の中で重要な事は、長期的な視点でものを見る、一見ランダムでは無いように見えるそうしたパターンが実は純粋な偶然によって起こり得ると言うことを理解することだ。また他人を評価する際、大勢の人間がいる中で成功や失敗の連続を経験するものが誰1人いなかったら、それは非常に奇妙であると言うことを理解しておくことも重要だ。ページ269
我々が錯覚にとらわれている時、そしてそのことで言うなら、何か新しい考えを抱いた時はいつでも、われわれは大抵その考えが間違いであることを証明する方法を探るのではなく、それが正しいことを証明しようとする。心理学者はこれを「確証バイアス」と呼ぶ。ページ279
哲学者フランシスベーコンは1620年に次のように言っている。「人間の理解と言うものは、一度ある見解を採用してしまうと、それに適合する例ばかり集め、たとえ反例の方が、数も多く、より重要である可能性があっても、その見解がぐらつかないように、それらに注意を向けないか、さもなければ拒絶するかのいずれかである。ページ280
…だから決定論は、人間の経験に対してはお粗末なモデルである。ノーベル物理学賞を受賞したマックスボールが書いてるように「偶然は因果よりも、より基本的な概念である」のだ。ページ289
我々が世の中のランダムネスの作用に気がつかないのは、この世を評価するとき、われわれは見えると期待しているものを見ようとするからだ。我々は基本的に成功の程度で才能の程度を定め、その関係を強調することで、我々が抱いている因果的な見解を強化している。だから、異常なほど売れている人間と売れてない人間とのあいだにはほとんど能力差がない事はままあっても、両者に対する見方には大抵大きな違いがある。ページ314
とりわけ私が学んだ事は、前向きに歩き続けることだ。なぜなら、幸いなことに、成功の1つの重要な要素、例えば打席に立つ数、危険を犯す数、チャンスをとらえる数が、我々のコントロール下にあるからだ。ページ320