強い者は生き残れない

「強い者は生き残れない」を読みました。面白い本です。生物学をもとに現代社会まで読み解いています。実にユニークな分析になっています。曰く「ホンダ日産、あるいはトヨタ日産なるメーカーが誕生する日はそう遠くない」(p.4)この惑星に生き残っているのは、環境の変化に適応した者であり、最も有効な方法は「他者と共存すること」だと論じています。「適応度の高い者」、すなわち「強い者」が勝ち残るのではないことを豊富な事例で示しています。「ナッシュ均衡」の解説は秀逸で、初めて理解できました。
企業経営としては、本業に特化して最適化する戦略が生き残りにつながるとは断言できませんし、分散して戦力の逐次投入をすることも同様です。人としては「情けはひとのためならず」の実践に尽きると教えられました。良書です、一読を強くお奨めします。備忘します。

新潮選書 強い者は生き残れない 環境から考える新しい進化論

新潮選書 強い者は生き残れない 環境から考える新しい進化論

…自然選択の最適化プロセスがいかに速く進むかを示している。…環境が変わると自然選択により、急激に生物は適応進化する。(p.29)
…エスキモーは極寒という極限環境に暮らしてる。そこでは赤ちゃんを夫婦間で交換し、自分の遺伝子を引き継ぐ我が子を自分で育てない。…この習慣がなぜ定着したのだろう。答えは協同行動の徹底である。結果、人々の絆は強くなり…(p.52)
…つまり、適応度が一番高くはないyが、絶滅を避けて存続していくことができるのだ。各々の環境で「強い者」が生き残るのではなく、すべての環境で「そこそこ」のyが最後には残るのである。(p.132)
…過酷になった新しい環境に適応した新しい共生体制を進化させた生物群が繁栄した。共生という手段はもっとも有効な生き残り方法だったのである。(p.175)
…ここで重要なことは、ファンド資本主義が、短期的には強者に莫大な利益をもたらすが、長期的には、その強者だけでなく、弱者を含んだすべての人々に不利益をもたらす…投資の自由化は…「破滅の道」を歩むしかないのである。(p.219)
私たちは今、4世代以降の人類を考え。「協同行動」を取らざるを得ないのである。…「強い者」は最後まで生き残れない。最後まで生き残ることができるのは、他人と共生・協力できる「共生する者」であることは「進化史」が私たちに教えてくれていることなのである。(p.229)