山中伸弥先生に、人生とiPS細胞にいて聞いてみた

山中伸弥先生に、人生とiPS細胞にいて聞いてみた」を読みました。さわやかな読後感です。冒頭、柔道団体戦で、そこそこの成績をあげた山中先生が、翌日の個人戦の応援にいかなかったことで顧問の先生にひどく怒られた思い出を語っています。今は個人で研究成果が出せるような時代ではなくチームの総合力の時代を示唆するようなエピソードから始まります。研究内容についても門外漢の私にもおぼろげながら理解できました。折れそうな心、逃げ出したくなる心、耐える心、悩む心、さまざまな思いを乗り越えたノーベル賞であることがよく分かりました。また優れた人の話はけっこうやさしいというのは本当のようです。皮膚細胞に4つの遺伝子を注入してiPS細胞を作ったとの報道を聞いて、どうしてその4つを選んだのか疑問でした。その答えは24個を全部入れてひとつづつ削除して必要な遺伝子を決定したとのこと、コロンブスの卵のような話でした。備忘します。

山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた

山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた

当時助教授の先生に何度も言われた「阿倍野の犬実験をするな」という言葉はいまも心に刻まれています。…アメリカの研究者がアメリカの犬は「ワン」と吠えたという論文を発表すると、日本の研究者は、日本の犬も頭を叩いたら「ワン」と吠えたという「日本の犬実験」の論文を書く。さらにひどい研究者は阿倍野区の犬を調べてやはり「ワン」と吠えたという「阿倍野の犬実験」の論文を書く。そういう誰かの二番煎じ、三番煎じの研究をするなというのが…意味です。(p.44)
研究者として成功するのはVWだ。VWさえ実行すれば、君たちは必ず成功する。研究者にとってだけではなく人生にとっても大切なのはVWだ。VWは魔法の言葉だ。VWのVはVision(ビジョン)のVです…WはWork hardのW。つまりハードワーク、一生懸命働くということです。(p.51)
…どんな細胞も設計図は同じであり、細胞の運命を決めるのはしおり(転写因子をコードする遺伝子)であることが証明された。(p,95)
理論的に正しいことは必ず実現する。(p.102)
ぼくの父は、息子が臨床医になったことをとても喜んで死んでいきました。ぼくは医師であるということにいまでも強い誇りを持っています。臨床医としてほとんど役に立たなかったけれど、医師になったからには、最後は人の役に立って死にたいと思っています。父にもう一度会う前に、是非、 iPS細胞の医学応用を実現させたいのです。(p.190)