資本主義は嫌いですか

「資本主義は嫌いですか」を読みました。リーマンショック直後に書かれた「流動性」についての本です。副題は「それでもマネーは世界を動かす」です。一般人向けに書かれてはいますが、結構難しいと思います。要するに、バブルは悪さをするばかりではなく、ことと場合によっては、経済を活性化させる効果もあるそうです。日本の土地バブルの対応が最悪であったことがよくわかりました。米国は金融機関のトップを直ちに更迭、ダメージを即時に公表をしたそうです。日本は「空気」を読み過ぎて問題を先送りしたので、こんなデフレがだらだらと続くことになってしまったとのことです。備忘します。★★

資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす

資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす

発生確率が予想できる危険を「リスク」といい、それが予想できない危険を「不確実性」というのが今日の標準的な用語法になっている。…なぜなら事業に関わる危険が確率予想のできるリスクだけであるならば、事業ついての収入の生産費の期待値が計算できてしまうからだ。…その結果、収入の期待値は生産費の期待値まで下がって、平均的には利潤は消滅せざるを得ないのである。(7ページ)
彼は「企業家は平均的には利潤を得る代わりに、損失を被っている」という推測を述べるのである。彼がそう主張する理由は単純明快だ。企業家とは本来、自惚れの強い人間がなる職業だから」というのである。(7ページ)
不確実性に挑戦することで、企業家は初めて「利潤」が実現できるというナイトの洞察が、資本主義の基本原理と言って良いと思う。(8ページ)
魔法の働きをする「ただの紙切れ」を我々はもちろん「貨幣」と考えて良い。しかも、この「紙幣」は全く書く何の価値もない。それなのに「購買力」が発生するのは、ひとえに「バブル」のなせる業である。それが「購買力」を持つと人々が信じるから、それに「購買力」が発生するわけである(78ページ)
バブルが「経済効率」をもたらすために必要な事は、「経済成長率」が「投資収益率」を上回る状態のときに、投資資金が「全体としてのバブル資産」に向かうことである。(88ページ)
二十一世紀早々に発生したら、この世界的な「デフレ」もしくは「ディスインフレ」の傾向を「金融資産」市場における超過需要の傾向の裏腹である、「実物財」の市場における「超過供給」の傾向の産物と解釈するなら、何もかも辻褄が合う。要するに「世界的な低金利」と「世界的な低インフレ」とは盾の両面だということである。(98ページ)
…紙幣づくりの件は、実のところ、実際にあった事件をモデルにしている。ジョン・ロー事件といって大革命以前のフランスを見舞った大騒動だった。ゲーテはジョン・ローをメフェストに代えてて劇に取り込んだ。(154ページ)