論語と算盤

論語算盤」を読みました。日本資本主義の父といわれる渋沢栄一の大正時代の講演録を現代語訳した本です。金儲けにもルールがあることを連呼しています。明治の頃、武士には武士道という道徳律が残っていましたが、商人には、よって立つ道徳律がなく、欧米の商人から不信を買っていました。それでは国民が豊かになれない、だから論語を基本にして商売しなさいという教えです。財閥になろうとすれば、三菱、三井にもひけをとらなかった渋沢栄一は、その私心のなさゆえに今に至るまでこうして私たちに影響を与え続けているのでしょう。銀行でいえばみずほ、保険会社でいえば東京海上、電力会社でいえば東京電力、ビールでいえばサッポロ等々を設立し、国力を富ました渋沢栄一に感激しました。備忘します。

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

名声とは、常に困難でいきづまった日々の苦闘のなかから生まれてくる。失敗とは、得意になっている時期にその原因が生まれる。(p.42)
…後日の大問題にならなくても、些細なことを粗末にするような大雑把な人では、しょせん大きなことを成功させることはできない。水戸光圀公の壁書きのなかに、「小さなことは分別せよ。大きなことには驚くな」としたためられているが、商売や軍務を初めとして、何事にもこの考えでなくてはならない。(p.50)
殷王朝を創始した湯王は、自分の顔を洗うタライに「一日を新たな気持ちで、日々を新たな気持ちで、また一日を新たな気持ちで」と刻みこんでいた。(p.112)
「忠」-良心的であること、「信」-信頼されること、「孝弟」-親や年長者をうやまうこと、などを重視するのは、とても権威のある人格の養成法だと信じている。要するに、忠信孝弟を重視するのは、「仁」-物事を健やかに育む、という最高の徳を身に着けるために、また、社会に生きていくうえでも一日も欠かせない条件なのだ。(p.145)
…ごく一般の青年であれば、小学校を卒業したら自分の経済力に応じて、それぞれの専門教育に飛び込み、実際に役立つ技術を習得すべきなのだ。(p.194)