ある明治人の記録

「ある明治人の記録」を読みました。ノンフィクションですが小説を読むように引き込まれました、良い本です。主人公柴五郎は会津藩の侍の子にして、戊辰戦争で祖母、母、姉妹を自刃により失う不幸にあっています、10歳の頃です。明治維新の大混乱が庶民に与えた影響の一端がよくわかりました。価値観が変わり、薩長の下級武士が成り上がり、追随する者が猟官運動に走る中で、武士のこころを失わず生きた人の記録です。彼は、後に義和団事件で活躍し陸軍大将にまで出世します。藩閥にあらずして異例の出世だと思います。「ある明治人」、柴五郎の苦闘の歴史、心して受け止めました。備忘します。

ある明治人の記録―会津人柴五郎の遺書 (中公新書 (252))

ある明治人の記録―会津人柴五郎の遺書 (中公新書 (252))

…余もようやく不可能なるを悟り、わかれ路の石標にすがりて伏す。口惜しきことかぎりなく、情けなきこと忍びがたく、母上、母上とさけびつづけ、地をたたき、草をむしりて号泣す。(p.28)
…この柴五郎中佐の活躍は数年前、アメリカで映画化され日本にも来たが(北京の55日)…(p.145)
「中国は友としてつき合うべき国で、けっして敵に回してはなりません」(p.146)
中国共産党に栄冠を与えたものは、愚劣な日本陸軍の中国政策だった…(p.150)