IoTが拓く次世代農業アグリカルチャー4.0の時代

「IoTが拓く次世代農業アグリカルチャー4.0の時代」を読みました。良書だと思います。前半は、これまでの日本農業の歴史と現状、問題点を上手にまとめています。この本だけで日本の農業は概観できます。後半の自立多機能型ロボット「DONKY」のコンセプトに驚きました! ベースモジュールとアタッチメントに分けて、1台で全ての作業をこなすロボットです。このロボットが開発されれば日本の農業は大変革を起こすでしょう。備忘します。

IoTが拓く次世代農業-アグリカルチャー4.0の時代-

IoTが拓く次世代農業-アグリカルチャー4.0の時代-

長期的な衰退トレンドが続く日本農業だが、近年新たな可能性の芽が育ちつつある。農業の新たなプレーヤの出現である。戦後長きに渡り、日本農業は個人経営や家族経営の中小規模の農家が中心となってきた。しかし今世紀に入ってから農業の収益性向上が重要な政策として掲げられるようになり、法人化や規制緩和が進み、農業法人や農業参入企業が新たなプレーヤーとして台頭してきた。農業営む法人は増加し続けており日本農業の中核的な担い手となりつつある。ページ15
2009年の農地法改正により①一般法人でも農地貸借(リース方式)であれば参入地域の規制なし、②農業生産法人への出資について、一構成員あたりの出資条件が、10分の1から4分の1以下(関連事業者は2分の1未満)まで拡大、③農地貸借期間の上限を20年から50年に延長、といった緩和が行われ、企業が長期的な視点で農業に関わりやすくなった。 直近の2015年の農地法改正では、農業の成長産業化という旗のもとでさらなる規制緩和が実施された。一般法人の譲渡権のベースの出資比率は50パーセント未満にまで引き上げられた。また時に「素人が農作業行わないといけない」状況を引き起こしていた役員要件について、企業側から送り込まれていくゆっくりともまれている人数の下限が緩和された。農作業に従事する役員は1名以上でよくなった上、企業側の役員は必ずしも農作業に従事しなくてもよいことになり、 「餅は餅や」で企画・営業・6次産業化事業といった得意分野に専念することが可能となった。2015年の農地法改正の概要は以下の通りである。ページ21
北海道の農家の収入が高いのは、ジャガイモ、玉ねぎ、とうもろこしなど手間のかからない農産物を大規模な農地で栽培して、規模の経済が働くようにしているからである。日本においてこうした栽培環境に恵まれている地域は稀であり、多くの地域では農家の収入を上げるためには、分散された広い農地でも高単価な農産物を栽培できる技術が必要となる。現場の最先端であるagriculture 3.5持ってしても容易には乗り越えられない高いハードルである。ページ81
スーパーマーケット等の大口需要家が設定した単価が価格水準を形成することで、単価の変動が少なくなるという傾向がある。大手流通業者のICT化が飛躍的に進んだことで、小売店の販売実績や物流コストなどの技術情報の集約が進み、集約に伴って流通事業者がいっそう大規模化し、さらなる情報の集約が進むという構造が生まれたからだ。大口需要家による直接仕入れは、農業生産者の安定した販売を可能とする上、流通ネットワークを活用することで売れ残りが発生しがたいというメリットがある。ページ107
流通事業者中心の市場運営は今後も拡大が予想されるが、日本の農業の付加価値向上のためには、生産者と消費者を近づけるICT化が必要である。ページ140
日本のアグリカルチャー4.0には反対は起きにくい。新規参入者が求められている上、高齢化、慢性的な人手不足がいっそう深刻化する中、省力化、自動化のための投資は歓迎される傾向にある。そこで農業の働き方の改革、一人当たりの収益性の最大化という方針を明らかにすれば、大きな支持が得られるに違いない。 IoTは、,あらゆる産業インフラの分野で導入されるが、農業は導入効果が最も高い分野の1つである。上述したように追い風要素が多いうえ、自動車の自動運転ほどの規制緩和や制度整備を必要としないからである。ページ141