エントロピーの法則

エントロピーの法則」を読みました。農業関係の本を読んでいて、この本に行き当たりました。農業自体は、太陽光を利用して光合成によりエネルギーを物質化する産業です。エントロピーの減少に当たるかと考えていましたが、さにあらずこれも生産の為に膨大なエネルギーを利用しており、熱力学の法則を乗り越えることはできないことを理解しました。うまくやれば破棄するエネルギーを減少させることはできるかもしれないというのがせめてもの救いです。備忘します。

エントロピーの法則―地球の環境破壊を救う英知

エントロピーの法則―地球の環境破壊を救う英知

熱力学の法則とは何か。この法則は「第一の法則」と「第二の法則」があり、「第一の法則」は、宇宙における物質とエネルギーの総和は一定で、決して創成したり消滅するようなことはない。 また物質が変化するのは、その形態だけで、本質が変わることはないという、有名な「エネルギー保存の法則」である。 「熱力学の第二法則」、つまり「エントロピーの法則」は次のように表わされている。「物質とエネルギーは1つの方向のみに、すなわち使用可能なものから使用不可能なもの、あるいは利用可能なものから利用不可能なもの、あるいはまた秩序化されたものから無秩序化されたものへと変化する。」 ようするに「第二の法則」は、宇宙の全ては体系と価値から始まり、絶えず混沌と荒廃に向かう、と説明することができる。ページ24
個人のレベルでいうなら、どうやってもうまくいかない、という危機に直面して初めて、われわれは今までのやり方を根本から変えてみようと思うものであり、慌てて様々な代案を試し始めているわけである。…個人の歴史と社会の歴史との間に決定的な違いはない。 どちらにしても、幸福な間は歴史は空白で、一度危機が訪れると発明が盛んに行われる。ところが残念なことに現代の歴史学者は、その大部分が、全く正反対の主張をしており、そのため、われわれは常識的な考え方を放棄し、こういった歴史学者の説に惑わされてしまうのである。ページ90
アメリカの農業は莫大なエネルギーを注ぎ込むことによって、環境全体のエントロピーをますます増大させつつある。そして、公害と土壌破壊といった形で無秩序が蓄積し、それがために社会及び農業部門の両方に、全般的な費用増を来たす原因となっている。しかも、費用が増大した結果、農業を支配するいわゆるアプリビジネスの拡大と集中化が一段と進行したわけだ。ページ171
つまり石油にしろ太陽エネルギーにしろ、それを大量に使うという発想は、これまでの人類の世界観を実現さすためのエネルギー的手段に過ぎない。だから、この世界観の誤謬を正すことなく、単にエネルギーに何を使うかという議論だけでは、私たちの眼前に迫ったエントロピー増大の危機に対する解決には、なんら貢献しないのである。ページ224
エントロピーの法則」が、やがてニュートン力学に代わって科学の支配的な規範となっていくことは、もはや疑いようのない事実である。なぜなら、変換の内容、その方向、そしてこうした変換過程の内部における現象全ての相互関係を、十分に説明してくれるのは、エントロピーの法則だけだからである。つまりエントロピーの法則は,長期間に渡って、我々の住んでいる宇宙から、新たなる常識を引き出す基本的な科学法則として、人類に、今後どう生きて生きていくべきかを教えてくれることになるであろう。ページ251