GDP 4%の日本農業は自動車産業超える

GDP 4%の日本農業は自動車産業超える」を読みました。 帯びには「2025年には一とあたり10ヘクタール!! 超大規模化する農地」とあります。著者は8年間「日本農業新聞」の記者として、農業政策や農業ビジネス、農村社会の現場を取材していました。数年前からフリーランスとして「食と農」の取材を続けている40歳の若き論客です。国の農業政策や農協には不満があるようで、舌鋒鋭く切り込んでいます。「出でよ!改革者」と叫んでいるようにも読めます。高齢者、障害者の雇用についてのレポートは大変興味深く読みました。「一口農場主」のレポートも大変示唆にとんだ内容です。備忘します。

2007年から超高齢化社会に突入している。高齢者が一番何をしたいかといえば旅行である。また時を同じくして、日本の農村に関心を持つ若者や外国人、企業が増えている。こうした変化を新たな産業づくりに生かせないか。そういう観点から日本農業を成長産業するための大きな可能性を秘めているのは「農村ビジネス」だと考えている。ページ5
零細な農家は農業所得が少ないから、腰を据えて農業に取り組もうとしない。農作業をするのは趣味を楽しむのためなので、規模を広げる意志は毛頭ない。これでは産業とは言えない。国はそうした農家を産業政策のもとで保護する必要があるのか。甚だ疑問である。ページ47
大量離農はやる気のある農家に大きなチャンスをもたらす。優れた経営者たちが、これから農業を変えていく。これからの農業はそうした民の力に任せておけばよくなる。ページ54
圧倒的な勢いで吐き出されてくる農地を前に、既存の農家はどうしたらいいのか戸惑うに違いない。頭の中をめぐる大きな悩みは、規模拡大したところで、そこで作った農産物をどうやって売ったらいいか、ということにある。売先さえ決まれば、農地を取得する段取りをして、それに向けて農業機械や農業施設に新たな投資ができるのだ。ただ、農協に出荷したところで、大抵の場合はたいして儲からない。それなら自分で売ればいいのだが、多くの農家は、米、野菜あるいは果物を作るのは得意にしても、得てして売るのは苦手。農家に経営の指導をし、たできることなら作ったものの面倒までみられる、販売や加工にたけた、優れた経営者の登場が求められている。 123
秀逸なのは、面倒な生産工程の記録や点検といった事務作業も簡単にこなせるように開発した、クラウド式の生産情報管理システム「パームクラウド」である。これの最大の特徴は、入力に使うのがタッチパネル式のタブレットであること。従業員は農産農薬の散布や施肥といった作業を行うたびに、このタブレットでどの畑で何をしたかを記録する。1作業あたりの入力時間はわずか30秒である。ページ135
フランチャイズ型農業やアライアンス型農業などで農家を束ねることを目指す人たちは、農協を反面教師とするべきだということ。すでに述べたように、このビジネスモデルは農協の経済事情と多かれ少なかれ似ている。概して農協が弱体化しているのは、市場の環境変化に対応できなかったことに加え、部会員の要望に応えられなかったためであることはすでに触れた。ページ142
企業で相応の働きをしてきた人たちなので紳士淑女が多いという。多くの人がいっしょに働いているので周りの気分を乱されるようでは困る。その点で企業で働いてきた人たちは、相手の立場に立ってものを考えた言動とってくるので職場の雰囲気良くなる。こうした感想は高齢者を雇うほかの農業者も強く感じているようだ。ページ176
障害者なら誰でも雇うわけではない。雇用するに当たって次の3つの条件を設けている。「障害者本人が働く意欲がある」「自力で通勤できる」「他の従業員と揉め事を起こさない」この3つはあくまでも最低条件。そもそも障害者が応募してきてもいきなり面接することない。まずは障害者の就労支援する公的機関を訪ねてもらう。そこで専門家による職業適性診断を経て、一ヶ月から1年に及ぶ訓練を受けてもらった後、一定の条件をクリアすれば採用する。ページ184
高齢者と都市住民と外国観光客。ではどうすればいいのか。1点目はまさに高齢者が増えている点だ。というのもシニア世代は貯蓄があり、生活にゆとりがある。おまけに時間もある。そんな人たちが何に金銭を使うかといえば旅行だ。2点目はいわゆる「田園回帰」だ。世論調査によれば、農村漁村住んでみたい願望がある都市住民は31.6パーセント、前回調査の20.6パーセントより11パーセントも増えている。3点目は外国人観光客の増加である。こうした好機を逃すべきではない。ページ203
農業でお年寄りが生き生きとするなら、それは立派な福祉。たくさんお金を使って作る今の福祉の仕組みより、よほどまともだ。ページ212
60歳を過ぎてから、農地の取得に動き出す。ただ案の定、農地法の厚い壁が立ちはだかる。とりわけトラック駐車場の開発会社を経営していたことで、農地委員会からの転用を期待しているとの疑いを書けられた。ページ229
どうやら食糧が過疎の問題に興味を持っていても、それに対してどうアプローチしていいのかわからない人は、我々の想像以上に多いようである。一口農場主への関心の高さは、そのことを教えてくれる。そうした人々と過疎地をつなぐ架け橋うまく渡してあげれば、新たな農村ビジネスに発展していくのだ。ページ233