天皇はなぜ生き残ったか

天皇はなぜ生き残ったか」を読みました。権力でもなく、権威でもなく、祭祀でもない。延命を果たしたのは「文化と情報」を固守したことにあると述べています。戦前なら発禁本です。奈良時代律令制は理念だけで実効性なく、王権は平安時代でも絶対的ではなく、建武の中興の時は統治権すら確立せず、権威も失われたまま明治に至ったそうです。信長がもう少し生きていれば、天皇制廃絶まで追い込まれていたそうです。尊皇攘夷の考え方は江戸時代の儒教の影響によるもので、天皇の権威によるものではないことを知りました。備忘します。★★

天皇はなぜ生き残ったか (新潮新書)

天皇はなぜ生き残ったか (新潮新書)

優秀な人々が「かくあるべきだ」との理念をもって、身命すら賭して中国大陸に学び、日本に移植したにもかかわらず、律令天皇と朝廷が直面する「このようにある」実情に適合しなかった。(p.31)
大納言の上位が大臣である。内大臣→右大臣→左大臣と昇進してゆき、最高位である太政官大臣に至る。各一名。この他に天皇権力を代行する摂政・関白があり‥(p.38)
吉田定房は高い見識をもつ…忠臣で落魄した後醍醐天皇を見捨てず、吉野まで付き添う人である。…彼が「日本の天皇は万世一系であるから、もう盛んになることはないのだ」と言い切っていることは、まことに注目に値する…(p.166)
神道が盛んであれば、「祭祀の王」としての天皇の地位は絶対であった。…神々は仏たちに吸収されていく。…最高神の天照大神ですら大日如来と結びつけられ、神道はオリジナリティを次第に失っていく。(p.198)