フリーエージェント社会の到来

フリーエージェント社会の到来」を読みました。15年ほど前に米国で出版されました。今の日本のことか!と驚きました。日本は米国の後をついて歩いているのかもしれません。この先、日本の雇用や産業構造がどのように変化するか、示唆に富んだ内容です。「ライフシフト」と同じように長寿化の波が世界を変えると述べています。著者ダニエルピンクの定義で言えば、私は、まさに「フリーエージェント」です。すなわち私が仕事に求めているものは、「自由」「自分らしさ」「責任」「自分なりの成功」ですので。刺激されて、いくつかのビジネスを思いつきました。事業化できるかもしれません。良書です。備忘します。

フリーエージェント社会の到来 新装版---組織に雇われない新しい働き方

フリーエージェント社会の到来 新装版---組織に雇われない新しい働き方

大組織に縛られることなく、自分の未来を自らの手で切り開くフリーエージェントたちは、アメリカの労働者の新しいモデルになり始めている。ページ10
オーガニゼーションマンからフリーエージェントへの移行は経済と社会に起きているもう一つの根本的な変化の原因であり、結果でもある。今、力の所在は、組織から個人に移り始めている。組織ではなく個人が経済の基本単位になった。一言で言えば、社会はハリウッドの世界に変わり始めたのだ。ページ14
このハリウッドモデルが、要するにフリーエージェントモデルなのである。大勢の個人を常に戦力として抱える固定的な大組織は、戦力が常に入れ替わる小規模で柔軟なネットワークにとって代わられようとしている。ページ15
職場の給湯室で井戸端会議ができないミニ起業家やフリーランスは、孤独で寂しい思いをしなくてはならない。孤独に陥りかねないというのは、フリーエージェントのデメリットのひとつだ。しかしこの新しい働き方を実践する人たちは、職場での社交関係の代わりになる小グループを作り出し、新しい形のコミュニティを生み出している。ページ22
多くの人は自分の働いている組織よりも長生きする。今の仕事がずっと続くと言える人はどこにもいないのだ。そう、今や私たちの誰もが臨時労働者なのだ。ページ32
ミニ企業の中でも特に興味深い形態は、ノースカロライナ州ローリーのフリーエージェントが「ナノコープ(超ミニ企業)」と呼ぶタイプのものだ。…ナノコープは容赦なく小さい企業のことである。「容赦ない」といっても別に人を「殴って」というわけではない。拡大を目指さないという戦略を「容赦なく」追求しているということを意味する。ページ45
控えめに3,300万にと考えたとしても、膨大な人数である。アメリカの労働者の4人に1人がフリーエージェントという計算になる。誰からも命令されることなく、これだけの数の人が従来の労働形態からの独立を宣言したのだ。ページ48
会社がファミリーだという考え方は、よく言って時代遅れ、悪く言えば幻想に過ぎないということに、IBMボーイングが気づいたのだ。ページ54
重要なのは企業の寿命が短くなっているこの時代に、私たち一人一人の寿命は長くなっているということだ。これからは、勤め先の企業より長生きするのが当たり前になる。1つの組織に一生がい勤め続けるなうということは考えにくくなる。ページ62
「自由」と「自分らしさ」は、確かに気持ちがいい。しかし、それだけを追い求めていては、何も成し遂げられない恐れがある。そこで、フリーエージェントの労働倫理の第3の要素として、「責任」が登場する。ページ84
…人々がフリーエージェントという道を選ぶ動機は、経済的なものとは程遠い。アメリカのフリーランスやミニ起業家1,000人を対象にした調査を見ても、彼らが組織に雇われずに働くことを決めた最大の動機は、金ではない。回答者の9割は、自分の優先順に従って、他人の指図を受けずに行動したいというのを最大の動機としてあげている。ページ89
仕事はいいものでなくてはならない。楽しいものでなくてはならない。儲かるものでなくてはならない。楽しく楽しくなければ、仕事を変えたほうがいい。ページ93
…4つの価値観「自由」、「自分らしさ」、「責任」、「自分なりの成功」によって、私たちの労働倫理は変化してきた。新しい価値観を最も体験しているのはフリーエージェントだが、それ以外の人たちにも変化が生まれつつある。ページ97
このように、保障と忠誠心の意味は変わってきている。かつて人々は大組織にしがみつくことによって保障を得ていたが、今はリスクをヘッジし、複数の顧客やプロジェクトに仕事を分散させることによって保障えるようになった。ページ121
フリーエージェントネイションの至るところで、WICのようなFANクラブが続々と生まれている。FANのクラブには実用的な目的と実利を離れた目的の両方があり、メンバーは…横の忠誠心で結ばれている。こうしたグループは、固定的な組織ではなく、全体を統括する中央組織があるわけでもない。メンバーが自発的に組織するグループだ。そのため、あまり注目を集めにくいが影響は極めて大きい。ページ151
起業家やフリーエージェントってエージェントにとって一番大きな問題を1つ挙げろと言われれば、それは孤独だ。ページ166
そこで彼はフリーエージェント経済における人脈作りを新しく定義し直した。…「他人の身になること。自分の目標しばらくわきにおいて、ほかの人の夢の中に入り込んで考えること」と彼は言う。ページ167
一番得るものがあるのは、自分の問題について考えてるときではなく、他人の問題を検討してるときだ。そうフリーエージェントネイションで「は与えるものが得る」のである。ページ169
FANクラブ、フリーエージェント連合、起業家ネットワーク、同窓会グループの登場は、フリーエージェント世界で起きている現象の中でも特に注目すべきものだ。ページ172
弱い絆」の力は、フリーエージェントの組織図を理解する上で決定的に重要な要素だ。フリーエージェントは、「弱い絆」を介して、いろいろな場に出入りする人たちと知り合いになることができる。「弱い絆」で結ばれている知り合いは、いつも親しくしている相手ではないからこそ、自分とは縁遠い考え方や情報、チャンスに触れる機会を与えてくれるのだ。ページ185
互恵主義は、フリーエージェント経済が機能する土台である。約束を破った人間は、容赦なく抹殺される。ページ191
おそらく最も注目すべきなのは、在宅教育は、フリーエージェントの4つの価値観自由例文自分らしさ責任自分なりの成功にほぼ合致しているということだ。ページ305
しかし誰もが自分だけのプライベート・アイダホ(場所)に閉じこもって、日がな一日他人と関わりを持たずに働く世界はあまりにも無味乾燥だ。それにそうした環境では生産性も低い。この本の中ですでに述べたように、フリーエージェントには人との接触やコミュニティー、助け合いが必要なのだ。ページ323
次に何が来るかは、はっきりしてるように思える。社債を発行する企業が堅実な大企業だけでなく不安定な新興企業にも広がったように、…債券を発行する個人も、有名人だけでなく一般人にも広がるだろう。フリーエージェントは、こうしたいわばフリーエージェントネイションによって事業資金を調達するようになるに違いない。ページ342
フリーエージェントとは、企業がから見れば、ジャストインタイムの人材調達を可能にするのだ。特定のプロジェクトのために必要な適材を必要な人数だけ調達することができる。ページ366

40歳が社長になる日

「40歳が社長になる日」を読みました。Fincの溝口さんのお知り合いだとのことで読んでみました。大企業に勤めている30代の社員の応援歌です。著者は三菱商事、ハーバードMBA,マッキンゼーと赫赫たる経歴の持ち主です。今も大企業の社外取締役を務めているとのこと。まあ、秀才の意見本です。「ビジョナリーカンパニー」を読んでる気分でした。結果論に過ぎます。大企業で修羅場を経験した私から言わせると、机上の空論に見えます。お目にかかっていないので、どんな方か断言できませんが、「爺殺し」のような気がします。きっと素敵な方です。40歳で大企業のトップになる人はこの本を読んでも読まなくてもトップになります。才能の十分でない人が自分を慰めるには最適の本ですが、普通の社員に著者のオーダーをこなせる人はいないでしょう。本書で何度も取り上げている「ライフシフト」では「若いデジタルネイティブしか成功しない」とは言っていません。全世代に対してマルチステージを提唱していました。多分、意識的な誤読です。高齢者が可哀想です。「経営」は少数の勝者を作り出すことが目的ではなく、無能でも誠実な人たちを生かしていくことが目的です。会社は存続が目的です。若者を惑わすのは如何なものかと…

人間と機械の間 心はどこにあるのか

「人間と機械の間 心はどこにあるのか」を読みました。大阪大学のロボット学者と東京大学の人工生命学者の共著、対談の本です。「人間とは何か」「生命とは何か」を、二人の科学者で論じています。まさに哲学です。非常に難解です。途中の議論を除き、結論を重視して読みました。人類の未来を覗き見たような気になりました。「生命をコピーできればコントロールできる」ことを理解しました。備忘します。

人間と機械のあいだ 心はどこにあるのか

人間と機械のあいだ 心はどこにあるのか

言い換えれば、意識とは「世界」と「自分」のモデル化である。脳内に作られた仮想世界で「自分」をシュミレーションしているのだ。世界の認識と自分の認識、それが同時に脳内で起こっている。ページ13
現実世界に流れ続ける時間と、それに伴う膨大な情報の流れを脳内モデルとして固定するという機能こそが意識や記憶の役割ではないか。長い記憶がなければ、自分とは何者かを説明しにくい。昨日と今日の自分が連続していると信じられなければ、アイデンティティーは築けない。しかしながら、小学生の時の自分と今の自分の自己意識同じではないし、つながっていないように思われる。ページ17
そもそも人間が技術を生み出した理由は、その大きな脳にある。人間の脳は、その大きさと複雑さゆえに、自らを客観視することができる知能を持つ。人間には「自分を見る自分」を再帰的に認識できるという、他の動物にはない能力がある。ページ23
ロボットが増えれば生活は便利で豊かになる。しかしそれ以上に人間は人間について深く考えるようになる。ぼくはそれがロボット社会の本質であると考えている。人間とは技術を使う動物であり、技術によって進化してきた。その技術が作り出すロボット社会において、人間はその本質に向き合うことになるのである。人間の真の進化とは、人間そのものの本質的理解に到達することなのかもしれない。ページ39
このこと逆説的に捉えれば、「心」とは実体のないものであり、むしろ他人がその人に「心」を感じるかどうかだけが問題となる。そして、互いに「心」を感じることで、自分にも同様の「心」があると信じることが、「自分の心」というものの正体かもしれないと思うのである。ページ76
…僕はどこかでどうしても生命となるシステムは中身も大事だという気がしている。…インターネットから生命が生まれる、とか、ロボットが生命になるかもしれない。それがALIFEの取り組みだと言えるわけで、いつ生命なったがとみなせるか。それを「れこれの代謝反応があるから」と内側のメカニズムから判断するか「、俺が見て生命に見えるから」と外側の判断に行するか。多分それは内側ができれば外側が、外側ができれば内側がともなっているだろう、という確信を持って研究をするしかないのではないかと思います。ページ161
実際人間の脳を上げ広げてみても、そこに何か書かれているわけではない。数千億の神経細胞がやりとりする電気信号と化学信号が複雑なパターンを作り出しているだけだ。そこに自律的に生まれ出るのが、意識であり、人の人らしさとでも言うべきものだ。つまり、ビッグデータは使う人が外にいる。過剰なデータの流れはデータそのものが組織化する。ページ183
AIは人工生命化する技術の中の1つ、サイドヘッドに過ぎない。AIが問い合わせに答えるタイプのオラクルから自律的にタスクを判断して実行するソヴェリンというタイプとなって初めて人類の脅威となるだろう。自律的にというのがキーワードでそれを持つソヴェリンというタイトルはまさに人工生命のことである。ページ203
インターネットは意識を持つと思っているが、それはそうした時間性が濃くなったり薄まったりできるからかもしれない。時間を消去することが記憶であり、その記憶の維持が意識なのであれば、その時、機械性を帯るのかもしれない。ニューラルネットワークのようにパターン認識と記憶が得意なシステムにたくさんの映像見せて、そこから時間を取り去る仕方の1つがディープラーニングである。ページ246

サイレントランニング

「サイレントランニング」を観ました。面白くない映画です。エコロジーをテーマにした未来SFです。植物学者が実験用の農園を守るという話です。出演のロボットはR2−D2のモデルでは? と言われている通り、しゃべりませんんが、人間に忠実な召使です。

あらすじ(ネットから要約 http://movie.walkerplus.com
今世紀末、地球上の植物は絶滅していた。わずかに3隻の宇宙船のドームで緑の草花や木々が育てられているだけだつた。ヴァレー・フォージ号もその1つで8年間乗り組んでいる植物学者フリーマン・ローウェル(ブルース・ダーン)を除いて、他の3人の乗組員ウルフ(クリフ・ポッツ)、バーカー(ロン・リフキン)、キーナン(ジェシー・ヴィント)は早く帰還したがっていた。ある日、地球からドームを爆破して帰還せよという命令が下り、3人は大喜びする。しかし、ローウェルは悲しみ、怒り、ドーム爆破の準備をしている3人を殺害し、ヴァレー・フォージを土星の方向に進める。彼は3体のドローンをプログラムし直し、植物育成の手助けをさせる。土星の輪で一体のドローンが吹きとばされた。ローウェルはそのドローンにルーウィ、残る2体にヒューイとデューイという名をつけた。やがてドームの植物が枯れ出す。暗黒空間に入り込んだためと分り、ライトを点灯した。その後、地球の宇宙船がヴァレー・フォージを見つけ救出にやってくることになった。もはや逃げられぬと悟ったローウェルは、デューイに後を託してドームを宇宙空間に発射し、事故に遭って動けなくなったヒューイと共に運命をともにすることにし、ヴァーレー・フォージを爆破した。ドームではデューイが草花にせっせと水を与えている。

インターステラー

インターステラー」を観ました。ストーリーが泣けました。父と娘の「愛」の物語です。五次元の表現はよくできていました。特撮シーンもよく描けています。ロボットの形は特異的ですが、動いているシーンを見ていると意外に機能的です。

あらすじ(ネットから要約 http://movie.walkerplus.com/
劇的な環境変化によって、寿命が尽きかけている未来の地球。新たに発見された宇宙のワームホールを利用し、居住可能な新たな惑星を探すという、生きて帰れるかわからない重大な使命を担う壮大な旅に、まだ幼い子供を持つ元エンジニアの男と、数少ないクルーが選ばれる。人類の限界を超え、不可能にも思える史上最大のミッションのため、前人未到の未開の地へ旅立った一行は、自らの使命を全うし、愛する家族の元へと生還することができ、父娘は再会する。

事業の引き継ぎ方と資産の残し方

「事業の引き継ぎ方と資産の残し方」を読みました。古い友人の北岡先生の著作です。この五月に出版され、直後に献本いただきました。バタバタしているうちに本日読了しました。会社設立したばかりの私には、引き継ぐ事業や資産が残るかどうかも怪しいのですが、一般知識として面白く拝読しました。思えば、祖父は造船業の承継に失敗、義父も鉄工所の承継に失敗したのだなあと感慨深く読みました。ポイントは権限の継承と節税だと了解しました。また信頼できる専門家にまかせるべき事案です。備忘します。

事業の引継ぎ方と資産の残し方ポイント46

事業の引継ぎ方と資産の残し方ポイント46

  • 作者: 広瀬元義,工藤聡生,龍岡亮,河村好夫,鈴木忠伍,井上朋彦,田中一,眞?正剛,富塚昇,宮崎信一郎,小林修,小川正人,佐藤誠司,中町三雄,松井良行,岡?正毅,小嶋純一,北岡修一,井内敏樹,澤井大介,常住豊,石川和司,西井大輔,瀬尾貴政,浅木克眞,岡部芳告
  • 出版社/メーカー: あさ出版
  • 発売日: 2017/02/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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利益の出ていない部分があれば、たとえ売り上げが大きくても思い切って切り捨て、伸びている部門に経営資本を注入するという策を計画し、実行するようにしましょう。事業継承はピンチではなく良きチャンスなのです。ページ28
あらゆる企業に有効とは限りませんが、それはデットエクイティースワップと呼ばれる手法です。ページ42
何らかの理由で少数株や名義株を集約できず、後継者が安定して会社経営できそうにないと予想される時はどうすればいいのでしょうか。そのひとつの方法として、新株の発行があります。その新株を後継者だけに割り当てます。そうすることによって相対的な後継者の株式保有率をアップさせるのです。ページ52
贈与を受けた時点で、自社株の値段を後継者とそのほかの推定相続人との間で合意した額で固定することを可能にしたのが「固定合意」の制度載です。固定合意により、事業を引継いだ後継者は、安心して全力で経営することができます。ただし、固定する価格については、公正な評価が必要となりますので、経営者が勝手に決めたりができません。ページ65
事業継承のための様々な方策というのは、結局のところ悪い種を次世代残さないために、今の形を根本から改善し再検討することです。ページ102
ミッションとは、組織の基本的役割であり、使命です。ビジョンとは、その組織の将来の目標や目指す方向です。バリューとは、ミッションやビジョンを達成するためのメンバーで共有する価値観です。ページ112
相続税の申告も納税も、相続が発生した日から10ヶ月以内に行う必要があります。10ヶ月もあると思ってるとあっという間に機嫌が来てしまいます。相続には様々なやることが多いからです。特に事業継承に絡む相続ですと、個人のことから会社のことまで様々な手続きから挨拶から引き継ぎまで息つく暇もないでしょう。ページ172
顧問税理士に日々の会計業務にプラスして、授業承継も依頼する。これが経営者が最も本業に専念できる授業承継承継対策をしたいのです。ページ191

人間とロボットの法則

「人間とロボットの法則」を読みました。先月、NHKで石黒教授の「最終講義」を視聴しました。本書は、ほぼその内容に添っています。「千年後に人類は無機物になる」という黙示録的な予言です。諦観と技術進歩への確信が生んだ予想です。核ミサイルでも死なない人間が現出するのか? 見ものです。過渡的な段階でロボットやアンドロイドが産業化します。その前髪を捕まえられるかどうかが、私の行く末のキーポイントです。備忘します。

他者と同様に、ロボットも自分自身を映し出す鏡になる。欲求や意図を持ったロボットができれば、ロボットを通して自分とは何かということを理解していることができるだろう。ロボットの研究は人間理解のひとつのアプローチである。ページ12
ある仕事をするための能力において、人間の雇用コストよりも低いコストで行えるロボットができれば当然代替えがすすむ。歴史を振り返れば、様々な仕事が機械化することで人間の仕事を奪ってきた。しかしそのことによって、人間は生産性を大きく向上してきたのである。ページ20
重要なのは人間とロボットを区別することではなくて、ロボットと融合して人間の能力を拡張することである。今の仕事の大半をロボットが代わりに行ってくれるようになれば、人間はより高度な能力が要求されることに集中できるようになる。ページ24
すなわち技術の発達は人間全体の能力の底上げをするが、能力が高い人間とそうでない人間の差を広げるのである。技術はすべての人間の能力を均等に上げるものではないのである。ページ36
永遠に価値が落ちないかどうかは今後の検証が必要だが、アンドロイドによって人間は死後も社会に存在し続けることができるようになるのである。ページ48
エクスタシーによって他者と融合し、他者から学び、アイデンティティーの確立を通して自己を確固たるものにする。これが、人間が社会の中で成長するということである。ページ60
欲求や意図、行動の履歴が記録される必要がある。知覚を伴う行動の記憶を介して、自らの欲求に気づき、環境認識しながら、その要求を満たすための意図を生成することができる。気がついた欲求も生成された意図も、もちろん記録されていく。ページ64
人間の場合は、人間に対する信頼は様々な状況に応じて変化する。同じ人間に対しても状況に応じて信頼度が変わる。この人間的な信頼は社会を構成するために非常に重要である。信頼が成り立っている社会だからこそ、すべてのシュミレーションを行う必要がなく、効率的なシステムを築くことができる。ページ72
この「動き」や「声」「臭い」など人間らしさを表す要素をモダリティという。人間らしさを目指すロボットにおいて、モダリティが多い状態だと、違和感を抱かれやすい可能性が高くなる。逆に、モダリティを減らし、人間らしい特徴を削ぎ落とすとどうなるか。そうすると今度は、人間が足りないモダリティを自身の想像で補うようになる。足りないモダリティを受け手が都合よく補うため、精巧さを目指したAndroidよりも人間らしい印象与えることができる。ページ74
ケアセンターや認証治療の病院で言われるのは、高齢者にとって会話は、とても重要だということである。認知症の進行の抑制や要介護状態の予防にもつながるという。ページ82
人間は少ない情報を元に物事をいきなり一般化するが、実はこれは非常に重要な性質である。すべての情報を集めてから正確に判断しようとするとあまりに非効率なのである。ページ86
もしロボットと人間の一対一だった場合、完全な音声認識がなかったら、人間が何か答えても、その対応は時折、破綻し、対話感を得ることは難しいだろう。音声認識が完全な場合においても、破綻しない対話を続けるには、ロボット二台でストーリーを展開しながら、そこに人間を巻き込む仕組みが必要である。ページ94
客観的な情報だけを積み重ねてもすぐに議論は収束してしまう。合間合間に主観的意見が入ることによって、対話が続くことになる。相手の個性やアイデンティティーを認識することにもなる。これが共に食事をするということの本質であり、主観と客観の間で間の情報交換を楽しんでいるのである。ページ104
現代の人間の活動に改めて目を向ければ、技術なしにはほとんど何もできない状態になっている。乱暴に言えば、人間の活動の90パーセントは技術によってなされていると考えることができ、そのことは人間が90パーセントは技術であり、機械であることを示しているように思う。ページ108
技術の開発がすすむということは、人間の機械化が進むということにほかならない。人間は技術開発によってその能力をどんどん技術に置き換えている。そして人間の中の動物的な部分はどんどん小さくなりつつある。ページ118
複雑な構造を持つタンパク質などの有機物は、環境適応力が高い。一方で、その構造は壊れやすく寿命は限られている。有機物の最終進化の形態として生まれた人間の役割は、有機物が進化の過程で獲得した知能を寿命がはるかに長い無機物の体に移し替えることである。言い換えれば、有機物は知能化のための一時的な形態に過ぎない。ページ124