野村萬斎の狂言

野村萬斎狂言」を読みました。10年前の野村萬斎さんの紹介本です。狂言の簡単な解説と有名作品の開設、本人の生い立ちなどで構成されています。読者は子供を想定しているようです。映画やバラエティに出演している萬斎さんにたいへん好感を抱いており、読んでみました。「陰陽師」、三谷幸喜作「ベッジ・パードン」の夏目漱石もよいと思います。「のぼうの城」は未だ見ていません。備忘します。

六世紀の飛鳥時代やそれに続く奈良時代朝鮮半島や中国から、仏教や様々な文化が伝わってきた。その中に、奈良時代に中国から伝わった散楽という芸能がある。散楽は、滑稽な歌や踊り、ものまねなどをする芸能で、これがやがて、寺や神社で行われていた日本古来の歌や踊りと結びつき、平安時代には猿楽と呼ばれるようになった。室町時代になると、この猿楽の喜劇的な要素が強い対話劇の「狂言」と歌や踊りの要素も強い歌舞劇の「能」に姿を変え、それぞれが発展していった。狂言と能は、言ってみれば一卵性双生児の兄が狂言で弟が能であり、現在合わせて「能楽」と呼ばれている。(33ページ)
狂言足袋には、ごく細い黄色の縞が入っている。足袋の原型は「単皮」と言う鹿皮の靴下のようなもの。室町時代には、これだけで地面を歩いたり、この上にわらじのようなものをはいたりしていた。その名残で狂言足袋は黄色の縞が基本になっている。(29ページ)
子供の頃は、「自分をなくして、父のやる通りにやる」という稽古に反発を感じたことがあった。だが、自分が父親になった今では、父と同じように子供に教えている。狂言の世界では、昔から父親と子供の間で、同じようなことが繰り返され、そうしてきたからこそ、現代まで伝えられてきたのだと思う。そう考えると、あんなに反発を感じた稽古の方法は、狂言を伝える最良の方法なのだと思う。(44ページ)