人は、なぜ失敗の教訓を生かせないのか? 原発の電源喪失、韓国セウォル号沈没、自衛隊の間違った銃選択、鳥羽・伏見の戦い、西南戦争の真実、そして先の大戦の日本軍などなど、それぞれの実例をもとに危機管理を論じています。失敗は微細な事象の積み重ねであることが良く分かりました。良書です。備忘します。
- 作者: 樋口晴彦
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2015/06/01
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (1件) を見る
近年、安全安心を求める世論の高まりを受けて、行政機関では規制強化を進めている。その反面新規設備の導入や旧式設備の廃止に対して高いハードルが課せられるようになった結果、企業側では危険性も高い旧式設備をやむなく使い続けるという問題が1部に発生している。面倒くさい手続きを増やせば増やすほど安全は加工されるという根拠のない思い込みから、そろそろ脱却すべきではないだろうか。ページ31
コスト削減に血眼になっている世相に背を向け、出入りの業者と昔ながらの長期継続的関係を守り続けていた、そのため、震災地には修理業者がすぐに駆けつけ、なじみのガソリンスタンドでは優先的に燃料を融通してくれたのである。BCPをスムーズに進められるかどうかは、こうした下請業者のサポートに負うところが実に大きい。彼らとの長期継続的関係の維持が若干のコスト高につながったとしても、いざというときに備えた保険料と割り切れば、それなりにそろばんがあるのではないだろうか。ページ42
コンプライアンスは重要ではあるが、煩雑で時間がかかることは否めない。一刻を争う危機管理の場では、コンプライアンスの担保が人命救出に逆行する場合があり得る。机上の空論とは違って、実務では二兎を得ないケースがあるということだ。その時にどちらのウサギを追うのか、危機管理の担当者は覚悟を固めておく必要があるだろう。ページ76
ロシアのフリードリヒ大王の格言に「すべてを守ろうとするものは何も守りえない」とある。戦力を広く分散してるところに、敵方の集中攻撃を受ければ突破されるのは当然である。サムスンにあって日本企業に足りないもの、それは経営者の意思の強さではないだろうか。ページ90
情報システムの発達によって報告連絡が容易になったのは結構なことだが、その一方で上級管理職が細かい事にまで介入し、中間管理職から裁量権を奪っていれば、人材が育つはずがない。また、やたらと規則やマニュアルを作って中間管理職をがんじがらめに縛り上げてしまえば、ルーティーン以外の仕事を誰もやらなくなる。うちの課長連中は指示待ちで困ると嘆く経営者多い。しかし、彼らをそのように育て上げてきたのは誰なのか、胸に手を当てて考えてみるとよいだろう。ページ193
現代の経営者にも、榎本武揚らのように、方針を決めるべき時に決められずに時期を逸したビー、あるいは突拍子もない構想打ち上げて源房唖然とさせたりするケースが少なくない。前者に対しては、決断の作為先送りとは当面は何もしないという決断なのです、後者に対しては、夢やロマンをのは結構ですが、足元がお孫お留守になっていると、つまずいて転びますよと申し上げとこう。0時205