複眼で見よ

「複眼で見よ」を読みました。古本やで本田靖春の名前が気に掛かり購入しました。代表作「不当逮捕」か「誘拐」の記憶かも知れません、昔の印象が甦りました。当時から卓越したドキュメンタリー作家だと思っていました。本書を読んでみて、取り上げているテーマ、朝日の珊瑚ねつ造事件やリクルート事件など、テーマは古いのですが、その事件の解釈は今も色あせていないと感じました。「複眼でみる」というよりは、「確かな視座でみる」と訴えていると思います。中心がずれては意見は表明できません、むつ小川原や立川基地の記事を読んでみて、左でもなく、右でもない著者の正義と論理をとてもく心地よく読めました。今でいうと辛坊治郎さんみたいな方です。備忘します。

複眼で見よ (河出文庫)

複眼で見よ (河出文庫)

  • 作者:本田靖春
  • 発売日: 2019/10/05
  • メディア: 文庫

…私は大宅壮一氏をジャーナリストの先達として、ひそかに尊敬するようになった。それこそだれにも庇護を受けない、一匹狼である。それでいて、歯にキヌきせず物を言うのは、できそうに見えて簡単なことではない。ページ77
本田宗一郎のインタビューを終えて)世の中の仕組みがどう変わっても、基本は物をつくることにある。ならばその仕事にたずさわる人たちが、まず優遇されてしかるべきではないのか。そういう人たちをさておいて、銀行マンや証券マンがときめくのは、ちょっと筋が違うのではないか。ページ101
商品棚が多品種で彩られているのは一見豊かそうだが、そのうらには人間として低く遇されている人たちがいる。その人たちがおとなしいおかげで、会社も国も保っているのだけれども。ページ180
…競馬の「絶対」はない…私の内側で「必敗の信念」はいよいよ強固になるばかりsである。ページ196
自衛隊員の多くは、それでなくても差別を受けやすい立場からいまの職業を選んだ。彼らに対する地方自治体をあげての差別が、誰の名において許されるのか、はっきり答えてもらいたい。ページ230