思考・論理・分析

「思考・論理・分析」を読みました。この本は名著です。40年前に是非読みたかった! 経験で、思考、論理、分析は、なんとなく解っていました。これまで、たくさんの資料を作成しましたが、見よう見まねの工程でした。「思考」の本質は、メッセージを作り出すこと、「論理」は、演繹と帰納の織りなす綾であること、「分析」は、突出点と変曲点をグラフで見いだすこと、と了解しました。豊富な事例と明快な説明に驚きました。10年以上前、少壮のコンサル(三菱総研)からバランススコアカードの研修を受けました。その際「MICE」(抜け漏れなく)をしつこいほど言われたことを思い出しました。たいへん優れた本を読めてとても幸せです。備忘します。

思考とは、端的に定義するならば、思考者が思考対象に関して何らかの意味合い(メッセージ)を得るために頭の中で情報と知識を加工することである。ページ16
すなわち思考とは、思考対象に関する情報や知識を突き合わせて比べ、同じか、違うかの認識を行い、その認識の集積によって思考対象に関する理解や判断をもたらしてくれる意味合いである。ページ23
…分かる=判る=解るとは、思考対象の情報要素と思考者の持つ知識等を突き合わせて比べ、すべての各要素について”同じと違う”に分け尽くすことができた状態にたどり着くことであることを理解していただけたであろう。ページ25
「正しくわかる」ために必要な「正しく分ける」ための3つの要件は…1つはディメンジョンを整えること、2つ目は適切な位「クライテリア」を設定すること、そして3つ目は「MICE」であることである。ページ28
正しく「分ける」ための1つ目の要件は、「ディメンジョン」の統一である。ディメンジョンとは、抽象的水準あるいは思考対象飛行要素が属する次元のことを指す。適切に分けて比べるためには、まず比べようとしている事象や要素が同一中小水準上、同一次元上になければならない。ページ29
管理する場合の切り口、つまり分類基準を指す。ページ32
つまり、正しく分けると言う事は、思考目的に合致したクライテリアを設定できるかと同義であると言うことになるのである。ページ34
思考対象を正しく分けるための3つ目のポイントとして、「MICE」が挙げられる。「MICE」は、正しく分けるための方法論としての極めて有用なテクニックである。…日本語に訳すと、相互背反集合網羅となる。…「モレがなく、かつダブりがないこと」である。ページ35
我々が思考によって何かをわかるときは、すべてこの2つの指向成果、すなわち「事象の識別」と「事象間の関係性の把握」のどちらかか、あるいはこの2つの思考成果の組み合わせによってそれをわかることができているのである。ページ43
複数の事象が存在する時、それらの事象間の関係は「相関」か「独立」かのいずれかである。「相関」とは2つの事象が何らかの影響を及ぼしたり及ぼされたりする関係である。逆に2つの事象が全く影響及ぼし合うことのない関係が「独立」である。ページ52
ちなみに、因果関係に依拠して事象の成り立ちを認識説明する方法論を「因果律」と言うが、人間はこの「因果律」によって世の中の森羅万象を理解しようとしてきた。そして、この因果律に依拠した森羅万象理解のための営みが「科学」なのである。ページ55
このような2つの事象が互いに他方の原因となっている関係を「相互因果」と言う。ページ61
この「意味的連動性」は明快で平易な説明は困難であるものの、因果の捕捉に際しては極めて重要な条件である。ページ61
…ある問題を解決するために打つべき手を考える際に有用で正しい答えを得ようとするならば、事象と事象を因果の関係で結ぶ線の太さ、すなわち因果の強さに充分留意しなければならないのである。ページ77
思考とは思考者の頭の中で独立に行われる極めて属人的な行為であるために、思考者の保有する知識と性格によって思考のアウトプットとして得られる事象の識別も関係性の把握も、そして識別と関係性を組み合わせた、さらに大きな思考テーマの全体についての結論も、大きく異なってしまう蓋然性が存在する。ページ 82
ある「根拠に基づいて何らかの主張(結論)が成立していること」、「ある主張(結論)が何らかの根拠に基づいて成立していること」を「論理構造」という。そして論理構造において「根拠から主張(結論)を導く思考のプロセス、思考の道筋」が「論理」である。つまり「根拠」と「主張」によって「論理構造」が成立し、「論理構造」の中で「根拠」と「主張(結論)」をつないでいるのが「論理」である。ページ86
論理構造が成立するための条件は、2つある。1つ目の条件は「命題」が少なくとも2つ必要であること、2つ目はその2つの「命題」の一方が「根拠」、そして、もう一方が「主張(結論)」という役割として”繋がれ得る”ものであること。ページ89
「論理展開」とは、論理的な思考を行う場合に頭の中で情報を加工して論理を形成構築することであり、主張(結論)を導くひき出すための中心的頭脳作業である。ページ99
推論は結論として得られた命題の意味内容がどのくらい正しいか=確からしさと言う点と、規定命題の意味内容とどれくらい離れているか=距離と言う点の2つの観点からの評価によって、その価値が推論の価値についてさらにもう1点留意すべき点がある。納得性の問題である。推論を施工者自らの有用な結論探しのために行う場合には問題にはならないが、推論の内容を他者に伝える場合には、聞き手、読み手が感じる納得性が重要なポイントとなる。ページ109
結論から言うと、客観的正しさを担保することにかなった論理展開の方法論は、「演繹法」と「帰納法」の2つである。ページ112
演繹法」とは規程命題を大前提と照らし合わせて意味的包含関係を判断し、その意味的包含関係の中で成立する必然的命題を結論として導き出す論理展開である。ページ113
このように、「帰納法」とは数多くの事象を観察することによって見て取れる”共通事項”を””一般命題化するための論理展開の方法であり、「演繹法」が”純粋論理的”であったのに対し、「帰納法」は”実証科学的”な性格の論理展開である。ページ116
帰納法の結論の正しさは観察事象のサンプリングの仕方と共通事項の作り方によって決まるのであり、それぞれに重要な留意点が存在する。ページ129
1つ目のポイントは、何らかの共通事項が成立するような命題をそろえることである。ページ130
第二のポイントは一般化に妥当な事象をサンプリングすることである。すべての自然科学、社会科学の定理や法則は、実は現実の事象を集めた中から結論を抽出する機能によってのみ証明されてきたものなのである。ページ139
演繹法において大前提の命題が真でなければ、その論理展開から得られる結論は正しさの根拠を持たない。そして、その影響においての結論の正しさを支える大前提は帰納法によってのみ成立しているのである。ページ140
結論から言うと、「2つの正しさ」とは、”客観的正しさ”と”論理的正しさ”である。ページ142
…では客観的に正しいことを結論としているために妥当な論理展開、すなわち「ロジック」に加えてさらに必要なものは何か。「ロジック」と言う必要条件に加えて、どのような十分条件が揃っていなければならないのか。答えは「ファクト」である。「ファクト」と「ロジック」が両方揃ってこそ、われわれは客観的に正しい結論を得ることができるのである。ページ146
「現実的に正しいことだけが正しい」と言うことである。先に説明した3つの要件を満たしたファクトとロジックに基づいて得たつもりの結論であっても、もし現実的事実と齟齬があれば、その結論は当然正しくないのである。ページ150
分析と言う言葉は、いずれの文字も「分ける」と言う意味である。「分」は分けることそのものである、「析」”木を引き裂く”が語源で、その意味は「裂いて部分に分ける」ことである。このように「分析」の主要概念を「分ける」ことにある。ページ152
このように「分析」とは”分けてわかるための実践作業”なのである。ページ153
実践的行為としての分析は分析の本質である要素に分けることに加えて、3つの要件からなることがわかるであろう。すなわち①目的の存在、②情報収集の必要性、③意味合い(インプット)がアウトプットページ154
「構造化」は最も重要な分析のコアプロセスであり、分析対象を的確に構造化して理解することによって、実践的分析作業における”目的を満たす意味合い(メッセージ)”を得る上でも大きなメリットを得ることができるのである。ページ159
実際の分析作業は基本的に、分析のプロセスの設計、情報収集、情報分析、意味合い(メッセージ)の抽出と言う4つのステップで行われるが、基本的動作における勘所とでも言うべきポイントについて解説していく。ページ163
実践的分析作業のプロセスが設計を行うにあたって、考慮しなければならない事項3つある。分析作業に課せられた制約条件の第一の事項。そして、具体的作業として何を行うかについての作業計画は第二の事項。そして、分析作業を通してどのような分析成果が得られるのかをと言うアウトプットイメージが第3の事項である。ページ164
具体的に内在的な制約条件とは、「時間」「手間」「費用」の3つである。…外在的な制約条件は、分析の「目的」と「期限」である。ページ166
どのくらいの時間や手間を情報収集に当て、また集めた情報の分析にどれくらいの時間や手間を投入すべきかのバランスが適切でないケースが非常に多い。ページ169
「情報」の定義を示しておこう。「情報」とは、「不確実性を減ずるもの」である。もう少し厳密に定義すると、「当為者の目的に対して不確実性を減ずる意味内容」のことである。ページ173
…「情報の効用低減性」である。ある分析目的に対して不確実性を減じてくれる情報であっても、集めれば集めるほど良いと言うものではない。ある分析対象に関する情報集めていくプロセスにおいて、追加的1情報あたりの不確実性低減への貢献度は逓減していく性質があり、ある一定水準以上になるといくら情報追加しても不確実性は減じなくなってしまう。ページ175
集めた情報データから、例えば因果関係の存在や事象固有の際立った属性といった優位な意味合いを的確に抽出するための手立てが必要となる。その手立てとして最も有用なのはデータの「グラフ化」である。ページ180
「グラフ化」の最も重要な原則は、2次元で描かれるグラフにすることである。ページ184
2つの変数を扱う典型的なパターンは、棒グラフ、線グラフ、点グラフの3種類である。これに変数が1つの場合に使われる円グラフを加えた4つのグラフが最も代表的なグラフのパタンである。ページ186
グラフから読み取るべきデータが持つ意味合い、すなわち分析対象特性は、グラフ上では「規則性」と「変化」と言う形で表出する。ページ192
”規則性を破る”変化には、2つのタイプが存在する。2つの変化のタイプとは、「突出値」と「変曲点」である。ページ198
このように「突出値」や「変曲点」の発見は、その後の工程として”なぜ突出してるのか””なぜ変曲してるのか”を判明させてこそ、現実的に有用な意味合いメッセージにつながるのが特徴である。ページ200
次の段階へと次々と深掘りしていく「執着心」が、有効でレベルの高い分析結果をもたらしてくれるのである。ページ235
実際の分析作業において価値ある成果を得るための鍵を握っているものは「執着心」と言う極めて精神的、心理的なパタンである。ページ236