アリエリー教授の行動経済学入門

「アリエリー教授の行動経済学入門」を読みました。普段の購買行動について面白い事例が満載。楽しめました。ホテルの珈琲が高くても納得する理由がよくわかりました。手作り、こだわり商品を高く買う理由もよくわかりました。個人的には、自分の購買行動を大いに反省させられました。また商売をするときのコツも理解しました。例えば、隣の韓国では、リーマンショックの時に、クレジットカードの未払率が10%を超えたそうです。支払が後なので、つい誘惑に駆られて財布のひもが緩くなるのはよくわかります。購入させるためには人間の心理の研究がとても大事だと理解しました。「ヒトは騙されやすい」というのが感想です。備忘します。

機会費用とは、お金に関する決定を下すときに必ず考えなくてはならないことだ。今お金を使うという選択によって、どんな物事をあきらめることになるのかということを考える必要がある。ページ26
…私たちは簡単な比較に飛びつくことが多い。マーケティング担当者やメニュー設定者、政治家は、このことをは百も承知で、戦略を立てる上で利用している。ページ58
…商品が全く同じでも、出金の痛みの影響で、前払いならより多くの出費を惜しまず、後払いなら出費を渋り、都度払いなら出費をさらに減らす傾向にあるのだ。出費のタイミングの影響は実に大きい。ページ102
これがクレジットカードの邪悪で巧妙な特質の1つだ。クレジットカードの主な心理的効果は、消費者と出費のタイミングを分離することにある。またクレジットカードを使えば出費を後回しにできるから、機会費用をはっきり意識しなくなり、現在の出費の痛みが薄れるのだ。ページ109
この研究成果、つまり価値を大まかに把握しているときは、全くわからない時に比べてアンカリングの影響受けにくいことを覚えておこう。最初から頭の中で価値と価格帯が確立されていれば、価値判断はアンカーの影響受けにくいのだ。ページ136
つまり価格付けに関する初期の決定が重要だと言うこと、そうした決定が頭の中で価値を確立し、それ以降の価値計算に影響与えることを、アンカリングを示しているのだ。ページ141
最初は、ある分類の品の基準価格を完全に恣意的な方法で定めるが、一旦その分類内で決定を下してしまうと、それ以降同じ分類の品に関する決定は相対的に、つまり決定同士を比較することによって下される。…無関係なアンカーが出発点になっているため、それ以降のどの価格にも真の価値が反映されないのだから。ページ142
…私たちは喪失の痛みを、同等の利益を得る喜びよりも強く感じる。しかもちょっとした違いではなく、2倍ほども強く感じるのだ。ページ156
サンクコスト効果とは、一旦何かに投資すると、その投資を簡単に諦められなくなる心理を言う。そのせいで同じものにずっと投資し続けてしまう。ページ163
不公正感を刺激されると、値上げの正当な理由が目に入らなくなり、市場の見えざる手を払いのける。ページ178
何かに費やされた労力の度合いを測るのは、その代金が公正かどうかを判断するために日常的に用いる方法だ。ページ180
…成果は同じで時間のかかるサービスのほうに、より多くの金額を進んで支払おうとしたのだ。一般に、結果より能力を重視すると、無能さに対してお金を支払うことになる。実に不合理なことだが、私たちは無能さに報いることを、より合理的でより心地よいことに感じるのだ。ページ182
生産のコストや、走り回る人々が、費やされた労力が目に見える時、私たちはより高い金額を支払うことをいとわない。労力のかかるものはそうでないものに比べて価値が高い、と暗に決めつける。ページ186
要するに、私たちは言葉を通じて、公正さと質の指標である能力を垣間見るのだ。これが言葉が価値を生み出すまでの長く厄介なプロセスであり、その間のすべてのステップで、私たちは惑わされる可能性がある。ページ206
何かを期待し始めたその瞬間に、私たちの心身はそれが現実になった時に備えて準備を始める。準備をすることによって、経験の現実は変わり得るし、実際に変わることが多い。ページ219
価値を変化させる期待の強力な源泉と言えばもちろん、この本の中心テーマであるお金だ。私たちは高価なものにはより多くを期待するし、安価なものにはそれほど期待しない。そして自分で作り出したこの期待と価値の連鎖を通して、支払うことをいとわない金額に見合うものを手に入れるのだ。ページ232
あるものを今消費することで得られるメリットは、未来の別のもののためにそれを諦めることの代償を常に上回る。あるいは、オスカーワイルドの一言が、この問題をよく表している「誘惑以外のものなら何でも我慢できる」ページ240
私たちは物事の価値を正確に評価する。だが自制心が不足しているせいで、価値を正しく評価するかしないかにかかわらず、不合理な行動をとってしまうのだ。ページ246
お金はただの交換手段だと、肝に銘じよう。ページ263
お金に関する決定で問題にすべき事は、機会費用と、購入物から得られる真の利益と、他のお金の使い道と比べて得られる真の喜びだ。ページ270