影響力の武器(説得の秘訣)

「影響力の武器(説得の秘訣)」を読みました。これは名著です! 心理学を実生活に活用するための本です。他人にだまされないように、逆に、思うような結果を出すための人間の心理を分析しています。常識や経験に照らしても納得できる内容です。セールスマンや詐欺師が巧みに心理の穴を突いてくるて手練手管がよくわかりました。自らの販売や説得に利用したこともあるし、だまされたことも度々です。メカニズムはよくわかりましたが、利用するかどうかは、目的によりますが…。
スポーツ観戦に熱中しすぎる人は「パーソナリティーに隠れた欠陥、つまり否定的な自己イメージがある人々」というのは卓見です。また、「革命の担い手となりやすいのは、…生活の味をいささかなりとも経験した人々…当てにしていた経済的・社会的改善が突然手に入りにくくなったときに…武力蜂起してそれを確保する…」その通りかもしれません。備忘します。

セールスマンがもっと多くの利益を上げようと思うなら、高価な品を先に見せるべきです。そうしないと、コントラストの原理の影響力を利用できないばかりでなく、その原理のせいで商売がやりにくくなってしまいます。安い商品を最初に見せて次に高い商品を出すと、客はそれをいっそう効果に感じてしまうのです受けた恩実に将来必ず報いなければならないと言う義務感です。人類に広く共有され、しっかりと根付いているこの恩返しの気持ちは、人間社会の進化に非常に大きく貢献してきました。ページ36
返報性が、他者からの承諾を引き出す手段として、これほど効果的に使われる理由の1つは、その威力にあります。このルールには恐ろしいほどの力があり、相手に借りがあると言う気持ちがなければまず断るような要求でさえ、受け入れさせてしまうのです。ページ43
私が承諾する可能性を高めることができます。まず確実に拒否されるような大きな要求を私に出します。私がそれを拒否した後、それよりも小さな、あなたがもともと受け入れて欲しいと思っていた要求を出すのです。これらの要求を上手に組み合わせて提出できれば、私は2番目の要求を自分に対する譲歩だと考え、こちらも譲歩しなければと言う気になり、2番目の要求を受けるでしょう。ページ68
一度、自分の立場を明確にすると、行動やその立場と一貫させようとする強い力が自然と生じます。私たちは、情報が少ない段階で行った予測的な判断にも影響受け、最終段階の決定をその予備的な判断と一貫させようとします。ページ112
最初に小さな要求を飲ませ、それから関連するもっと大きな要求を通すと言うやり方には、「段階的要請法」という名が付いています。ページ119
社会学者によれば、人は自分が外部からの強い圧力なしに、ある行為をする選択を行ったと考えるときに、その行為の責任が自分にあると認めるようになります。ページ150
承諾先取り法には様々な種類がありますが、基本的な手口はどれも同じです。まず相手にとって有利な条件を提示し、喜んで買うという決定を誘い出します。そして、決定がなされてから契約が完了するまでの間に、もともとあった有利な購買条件を巧みに取り除くのです。ページ159
社会的証明の原理です。これは、人は他の人たちが何を正しいと考えているかを基準にして物事を判断するというものです。この原理が特に適用されるのは、どう行動するのが正しいかを決める時です。特定の状況で、ある行動を遂行する人が多いほど、人はそれが正しい行動だと判断します。ページ189
特に自分で確信が持てないときには、群衆の集合的知識を過度に信用してしまいます。…群衆の示す行動は誤りであることが非常に多いです。なぜなら彼らの行動は何らかの優れた情報に基づいているわけではなく、彼ら自身もまた社会的証明の原理に反応しているだけだからです。ページ258
私が知っている限りでは、好意のルールを最もはっきりとした形で商売に利用している例は、タッパウエアパーティーです。私はこれこそ承諾誘導の古典的な舞台装置だと思います。ページ269
力のある人の方が、他者との付き合いでは有利になると言うのは、一般によく知られている事ですが、最近の研究によれば、どうも私たちはその効果の大きさと影響が及ぶ範囲をかなり過小評価しているようです。ページ276
私たちは自分に似てる人を好みます。この事実は、意見や性格特性、経歴、ライフスタイルなど、どのような領域の類似性においても当てはまるようです。したがって、私たちから好意を獲得し、言うことを聞かせようとする人が、様々な方法で私たちと似てるように見せかけてその目的を達することができます。ページ280
…私たちが、おめでたいほどお世辞に弱いということです。…一般的にいって、私たちは他者からの賞賛を信じ、それを言ってくれる人を好む傾向があります。ページ284
栄光に預かる事を望む気持ちは、多かれ少なかれ誰にでもありますが、あまりその傾向が強い人たちには、何か特別な理由があるように思われます。彼らはどのような人たちなのでしょうか。私の推測が間違っていなければ、彼らはスポーツの熱烈なファンと言うだけではなく、パーソナリティーに隠れた欠陥、つまり否定的な自己イメージがある人々なんです。心の深層に、自分は価値が低い人間だと言う気持ちがあるため、自分自身の業績を高めて名声を得るのではなく、他者の業績との結びつきを形成し、それを強めることによって名声を得ようとするのです。こうした人たちは実に多種多様で、私たちの文化のいたるところで目にお目にかかります。有名なミュージシャンと1時間付き合っていたと友人に言いたいがために、自分の性的魅力を売り物にしているのです。ページ318
権威者に対して自動的に反応する場合、その実態にではなく権威の単なるシンボルに反応してしまう傾向がある。この点に関して、効果のあることが実験で明らかにされている3種類のシンボルは、肩書、服装、自動車である。これらにより多くの相手に言うことを聞かせることができた。常にどの事柄においても、言うことを聞いた人たちは、自分の行動に及ぼす権者の影響力の効果を過小評価していた。ページ371
検閲に関してなされた数少ない研究の結果は、概ね一致しています。ほとんど例外なく、ある情報の入手を禁じられると、私たちは、いっそうその情報を求めるようになり、その情報をより好ましく思うようになるのです。元にされた情報がその受け手にもたらす効果について…興味深いのは、情報の受け手が情報を受け取ってもいないうちから、その情報を信じるようになるという点です。ページ398
革命がもっとも起こりやすくなるのは、改善しつつあった経済・社会的状況が急激に悪化の方向に転じたときなのだそうです。したがって、とりわけ革命をおこしやすいのは、虐げられてきた人々ではありません。革命の担い手となりやすいのは、よりよい生活の味をいささかなりとも経験した人々なのです。彼らが経験し、当然のものと当てにするようになった経済的・社会的改善が突然手に入りにくくなったときに、彼らは以前にもましてそれを欲するようになり、ときには武力蜂起してそれを確保しようとします。ページ405
気まぐれに特権を与えたり約束事を押し付けたりする親と言うのは、我知らず子供たちに自由を与えているので、反抗招く結果となるのです。たまにしか感触を禁じない親は、子供たちが、そのようなお菓子を食べる中を作り出しているのかもしれません。子供からすれば、取り上げられているのは自動で所有したことのない権利ではなく、既に持っている権利だけです。政治的自由…の例で見てきたように、人々は、前から貴重であったものよりも、あなたに手に入れにくくなったものを望ましいとみなします。ですから一貫性のない矯正やしつけをする親の子供は大抵反抗的に育つと言う研究結果があるのも別段驚くべき事ではありません。ページ410