奥の細道

山本健吉奥の細道」を読みました。現代語訳、原文、評論という三部構成です。「奥の細道」は、旅の数年後に推敲を重ねてできた作品です。曾良随行日記によれば創作部分も随所に見みえます。芭蕉は、この旅の途中(出羽路あたり)で「軽み」の境地に達したと論じています。その境地を存分に表現した作品だそうです。
これまで俳句について、鑑賞も創作も避けてきました。理解できないので、遠ざけ、馬鹿にしていました。しかし、ツイッターフェイスブック、ブログも短い言葉で印象づけることが大切です。コピーライターは俳句を詠む能力を必要としているのかもしれません。俳句の本質は、「滑稽」「挨拶」「即興」だそうですので…。尚、オーディオブックで原文は何度も何度も聴いています。文章自体が流れるようで、心地よい響きがあります。備忘します。

俳句の本質…は、一、俳句は滑稽である、二、俳句は挨拶である、三、俳句は即興である…ページ190
芭蕉が「不易流行」説をといたのことは、飽くまでも「流行」を説くことが眼目だったのえ、「流行」とは、「不易」なものを死から甦らせるもの、言いかえれば俳諧に生き生きと嬉戯する生命力の働きをもたらそうとする願いだった。その願いはやがて「不易流行」などというやや重苦しい言葉を超えて、そのものずばりに「軽み」という言葉になる。それは別の言葉でいえば、「ウイット」または「エスプリ」という言葉に近い。五十年の生涯を通じて、より生き生きと生きようとする願いに痩せた、その果てに行き着いた世界が、すなわち「軽み」なのである。ページ223