未来をつくる教育ESD

「未来をつくる教育ESD」を読みました。教科書なので面白くないです。網羅的で、知識を与えるための本です。反論の余地が少ない秀才の書いた「まとめ」です。備忘します。

オルタナティブと言う言葉には、「何かにとって変わるもの」「選択可能な2つのうちの片方」といった意味があります。…この言葉ある社会の中で主流となっている習慣や方法とは異なる、別のあり方をさした際に用いられます。ページ54
共通する特徴は、第一に伝統的、画一的な教育方法に代わるものであること、第二に教育制度の多様化を目指す試みであることと言うことになるでしょう。ページ55
オルタナティブ教育は、昨日の肥大化した近代学校と言う教育のメインストリームに対峙し、子供の学習の自由及び学習選択の自由を追求する教育運動として展開されてきました。オルタナティブ教育は教育界において常にマイノリティーであり、ほとんどの国で全体の1割程度を占めるにとどまるとされます。ページ68
生涯教育から生涯学習へと表現を変えて展開されていくのは、1984年に接された臨時教育審議会が「生涯学習体系の意向」という方針を示してからのことでした。ページ85
グローバリゼーションが席巻する今日、このような状況は多かれ少なかれ、各国で見られるのではないでしょうか。日本も例外ではなく、グローバル経済の波が押し寄せ、若者は単純労働市場に駆り立てられるものと、ITなど高度な技能が求められるニューエコノミーに分断され、両者の経済格差はもとより、希望格差までも歴然としてきているのが現代の日本社会です。ページ103
イギリスの子供学校家庭省による全国のすべての学校をサスティナブルにすることを目指す運動では、持続可能な開発に不可欠な概念として「ケア」が挙げられ、3つの「ケア」を学校教育で大切にしていくこと、すべての学校で実践されることが求められています。すなわち、自身へのケア、相互へのケア、環境へのケアです。ページ104
ESDを学業教育と同義であるとみなす立場に対して、それは環境教育以上のものであり、南北格差等を重視する開発教育の要素も同様に重要であるとする見解があります。ページ106
第二の特徴として、「つながり」への着目が挙げられます。ページ107
ESDの特徴として3番目に指摘したいのは、教育のあり方自体を問い直す性格、すなわち「教育のパラダイム転換」が求められているということです。ページ108
このように、地球温暖化、エネルギー危機、食糧危機と言う「トリプルリスク」の時代に私たちは生きています。この3つの切迫した問題に、私たち一人一人が向き合い、対処していかなければならないのです。ページ125
「システム思考」とは、一つ一つの出来事のつながりをたどり、全体像を理解して、根本的な解決策を考えるアプローチです。ページ130
一方「バックキャスティング」は「振り返る」という意味で、最初に将来の理想像(ビジョン)を描き、その目標達成するためにより効果的な方法を考え、実行するやりかたです。ページ131
「成長」について考えるとき、単に成長がいけないと否定するのではなく、「奨励すべき成長」と「抑えるべき成長」を区別することが重要です。「奨励すべき成長」とは、私たちの幸せや満足につながるような成長のこと。これは抑える必要はなく、どんどん成長させていきたいものです。一方、私たちの幸せを増やそうと言う経済活動が、大量の二酸化炭素排出量や資源エネルギー消費量を伴うのであればこれは見直す必要があります。ページ134
一方の日本では、国のレベルよりも自治体レベルで再生可能エネルギーの導入がすすんでいます。日本には、太陽光や風力、小水力、地熱、バイオマス、バイオガスなど、様々な再生可能エネルギーがあり、地域によってその土地の特性や条件に合った再生可能エネルギーを利用することが可能です。ページ139
ここでのキーワードは文化や人の多様性です。多様性(ダイバーシティー)には「多種多様な状態、また特性」と「つながり支え合っている状態」の2つの意味がありますが、社会や企業学校などの組織上においては、多様な文化的社会的背景を持つ構成員の一人ひとりが、それぞれの持てる力を発揮して活躍できる状態を指します。ページ148
社会的な問題に対して、それぞれが「私の問題」として主体的に問い直す関係は、支援活動に参加しているだけで達成できるものではありません。常に自分自身や社会のあり方を深く省みて批判的に問い直すという、難しいけれども必要なプロセスを私たち一人一人が経験していくことが不可欠です。ページ199

銘酒誕生物語 平孝酒造

 銘酒誕生物語(wowwowオンデマンド)を視聴しました。福島県石巻市の平孝酒造(日高見)の物語です。蔵元は、5代目、平井孝浩氏。東日本大震災で蔵も酒も大打撃を受けたが、幸いにして復活。大吟醸にこだわった蔵元です。危機を乗り切った自信に満ちた方です。
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日高見は日本書紀にでてくる名で、太陽を表す地名。ひたかみ、きたかみの語源だそうです。
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生き方

「生き方」を読みました。京セラ、稲盛和夫氏の本です。長年、書棚に飾ってありました。読むと「叱られる」と予想していたからです。実際は、もうすでに私によくわかっていることを平易な言葉で書き連ねてありました。どうすれば良いかわかっていても、できないのが凡人です。若い人には、たぶん理解できないと思います。長野の伊奈食品の越塚会長も結核でした。「大病するか、監獄にはいるか、倒産するか」、そういう経験をした人しか大成功しないのかもしれません。備忘します。

生き方

生き方

  • 作者:稲盛和夫
  • 発売日: 2004/07/22
  • メディア: 単行本

すなわち、嘘をついてはいけない、人に迷惑をかけてはいけない、正直であれ、欲張ってはならない、自分のことばかりを考えてはならないなど、誰もが子供の頃、親や先生から教わった、そして大人になるにつれて忘れてしまう、単純な規範を、そのまま形の心にすえ、守るべき(会社の)判断基準としたのです。ページ19
物事成就の母体は強烈な願望である。あまり科学的とは言えない言葉です。…しかし思い続けて、考え抜いていると、実際に結末が見えてくるということが起こるものです。ページ44
ですから自分が成功した姿を思い描けると言う事は、その人にとって成功の確率が極めて高いと言うことなのです。目をつぶって成功した姿を想像してみたとき、その姿がうまくイメージできているのなら、それは必ず実現し、成就すると言うことです。ページ50
昨日の努力に少しの工夫と改良を上乗せして、今日は昨日よりも僅かながらでも前進する。その、より良くしようとする姿勢大事なことが、成功に近づく秘訣なのです。ページ68
私たちはいくつになっても夢を語り、明るい未来の姿をかける人間でありたいものです。夢を抱けない人には想像や成功がもたらされる事はありませんし、人間的な成長もありません。なぜなら、夢を描き、創意工夫を重ね、ひたむきに努力を重ねていくことを通じて、人格は磨かれていくからです。そういう意味で、夢や想いと言うのは人生のジャンプ台である、そのことを強調しておきたいと思います。ページ79
つまり、原理原則と言うものは正しさや強さのありがちなものでもあります。だからこそ、いつも反省する心を忘れず、自分の行いを自制自戒すること。また、そのことさえも生きる源で、原則に組み入れていくことが大切なのです。ページ94
どんな仕事でも、一生懸命打ち込めば良い成果が生まれ、そこから次第に楽しさ、面白さが生じてくる。面白くなれば、さらに意欲がわき、また良い成果を生む。その好循環のうちに、いつしか仕事を好きになっていく自分に気づくはずです。ページ110
つまり赤い龍が「怒り」、黒い龍が「欲望」、青い龍は、妬み、恨みといった「愚痴」で、この3つを仏教では「三毒」といいます。3匹の龍とは「三毒」のことであり、お釈迦様曰く、それこそが「人生をダメにする」要素なのです。ページ152
思いやりや利他の心が忘れ去られてしまえば、残るのは己の欲望だけです。そのような利己的欲望を容認し、放任してきた結果が、今の世相に表れているのではないでしょうか。ページ195
もともと私は、自分の人生を3つの期に分けて考えていました。80年をこの世での寿命として、最初の20年はこの世に生まれ、独り立ちして人生を歩き始めるまでの期間。第二期の20歳から60歳までの40年は、社会に出、自己研鑽に努めながら、世のため人のために働く期間。そして第3期は、60歳からの20年間で、死の準備に充てるべき期間です。社会へ出るのに20年の準備期間を要したように、死をを迎えるための準備にも、20年あてます。ページ228
「災難にあったら、落ち込むのではなく喜ばなくてはいかんのです。災難によって、今まで魂についていた業が消えていくのです。それぐらいの災難で業が消えるのですから、稲盛さんお祝いをしなくてはいけません。」ページ236

銘酒誕生物語 高木酒造

 銘酒誕生物語(wowwowオンデマンド)を視聴しました。岐阜県下呂市の高木酒造(初緑)の物語です。跡継ぎは、12代、高木彬江氏です。母親の病気を期に、英語の教師を辞め、老年の杜氏について修業中の跡取り娘です。蔵は男子に恵まれなかったものの、継承することになった蔵です。「心が和らぐ酒」を目指しています。とても素敵な方です。私に年頃の息子がいたら是非お嫁にほしい方です。心優しい孝行娘です。
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思考・論理・分析

「思考・論理・分析」を読みました。この本は名著です。40年前に是非読みたかった! 経験で、思考、論理、分析は、なんとなく解っていました。これまで、たくさんの資料を作成しましたが、見よう見まねの工程でした。「思考」の本質は、メッセージを作り出すこと、「論理」は、演繹と帰納の織りなす綾であること、「分析」は、突出点と変曲点をグラフで見いだすこと、と了解しました。豊富な事例と明快な説明に驚きました。10年以上前、少壮のコンサル(三菱総研)からバランススコアカードの研修を受けました。その際「MICE」(抜け漏れなく)をしつこいほど言われたことを思い出しました。たいへん優れた本を読めてとても幸せです。備忘します。

思考とは、端的に定義するならば、思考者が思考対象に関して何らかの意味合い(メッセージ)を得るために頭の中で情報と知識を加工することである。ページ16
すなわち思考とは、思考対象に関する情報や知識を突き合わせて比べ、同じか、違うかの認識を行い、その認識の集積によって思考対象に関する理解や判断をもたらしてくれる意味合いである。ページ23
…分かる=判る=解るとは、思考対象の情報要素と思考者の持つ知識等を突き合わせて比べ、すべての各要素について”同じと違う”に分け尽くすことができた状態にたどり着くことであることを理解していただけたであろう。ページ25
「正しくわかる」ために必要な「正しく分ける」ための3つの要件は…1つはディメンジョンを整えること、2つ目は適切な位「クライテリア」を設定すること、そして3つ目は「MICE」であることである。ページ28
正しく「分ける」ための1つ目の要件は、「ディメンジョン」の統一である。ディメンジョンとは、抽象的水準あるいは思考対象飛行要素が属する次元のことを指す。適切に分けて比べるためには、まず比べようとしている事象や要素が同一中小水準上、同一次元上になければならない。ページ29
管理する場合の切り口、つまり分類基準を指す。ページ32
つまり、正しく分けると言う事は、思考目的に合致したクライテリアを設定できるかと同義であると言うことになるのである。ページ34
思考対象を正しく分けるための3つ目のポイントとして、「MICE」が挙げられる。「MICE」は、正しく分けるための方法論としての極めて有用なテクニックである。…日本語に訳すと、相互背反集合網羅となる。…「モレがなく、かつダブりがないこと」である。ページ35
我々が思考によって何かをわかるときは、すべてこの2つの指向成果、すなわち「事象の識別」と「事象間の関係性の把握」のどちらかか、あるいはこの2つの思考成果の組み合わせによってそれをわかることができているのである。ページ43
複数の事象が存在する時、それらの事象間の関係は「相関」か「独立」かのいずれかである。「相関」とは2つの事象が何らかの影響を及ぼしたり及ぼされたりする関係である。逆に2つの事象が全く影響及ぼし合うことのない関係が「独立」である。ページ52
ちなみに、因果関係に依拠して事象の成り立ちを認識説明する方法論を「因果律」と言うが、人間はこの「因果律」によって世の中の森羅万象を理解しようとしてきた。そして、この因果律に依拠した森羅万象理解のための営みが「科学」なのである。ページ55
このような2つの事象が互いに他方の原因となっている関係を「相互因果」と言う。ページ61
この「意味的連動性」は明快で平易な説明は困難であるものの、因果の捕捉に際しては極めて重要な条件である。ページ61
…ある問題を解決するために打つべき手を考える際に有用で正しい答えを得ようとするならば、事象と事象を因果の関係で結ぶ線の太さ、すなわち因果の強さに充分留意しなければならないのである。ページ77
思考とは思考者の頭の中で独立に行われる極めて属人的な行為であるために、思考者の保有する知識と性格によって思考のアウトプットとして得られる事象の識別も関係性の把握も、そして識別と関係性を組み合わせた、さらに大きな思考テーマの全体についての結論も、大きく異なってしまう蓋然性が存在する。ページ 82
ある「根拠に基づいて何らかの主張(結論)が成立していること」、「ある主張(結論)が何らかの根拠に基づいて成立していること」を「論理構造」という。そして論理構造において「根拠から主張(結論)を導く思考のプロセス、思考の道筋」が「論理」である。つまり「根拠」と「主張」によって「論理構造」が成立し、「論理構造」の中で「根拠」と「主張(結論)」をつないでいるのが「論理」である。ページ86
論理構造が成立するための条件は、2つある。1つ目の条件は「命題」が少なくとも2つ必要であること、2つ目はその2つの「命題」の一方が「根拠」、そして、もう一方が「主張(結論)」という役割として”繋がれ得る”ものであること。ページ89
「論理展開」とは、論理的な思考を行う場合に頭の中で情報を加工して論理を形成構築することであり、主張(結論)を導くひき出すための中心的頭脳作業である。ページ99
推論は結論として得られた命題の意味内容がどのくらい正しいか=確からしさと言う点と、規定命題の意味内容とどれくらい離れているか=距離と言う点の2つの観点からの評価によって、その価値が推論の価値についてさらにもう1点留意すべき点がある。納得性の問題である。推論を施工者自らの有用な結論探しのために行う場合には問題にはならないが、推論の内容を他者に伝える場合には、聞き手、読み手が感じる納得性が重要なポイントとなる。ページ109
結論から言うと、客観的正しさを担保することにかなった論理展開の方法論は、「演繹法」と「帰納法」の2つである。ページ112
演繹法」とは規程命題を大前提と照らし合わせて意味的包含関係を判断し、その意味的包含関係の中で成立する必然的命題を結論として導き出す論理展開である。ページ113
このように、「帰納法」とは数多くの事象を観察することによって見て取れる”共通事項”を””一般命題化するための論理展開の方法であり、「演繹法」が”純粋論理的”であったのに対し、「帰納法」は”実証科学的”な性格の論理展開である。ページ116
帰納法の結論の正しさは観察事象のサンプリングの仕方と共通事項の作り方によって決まるのであり、それぞれに重要な留意点が存在する。ページ129
1つ目のポイントは、何らかの共通事項が成立するような命題をそろえることである。ページ130
第二のポイントは一般化に妥当な事象をサンプリングすることである。すべての自然科学、社会科学の定理や法則は、実は現実の事象を集めた中から結論を抽出する機能によってのみ証明されてきたものなのである。ページ139
演繹法において大前提の命題が真でなければ、その論理展開から得られる結論は正しさの根拠を持たない。そして、その影響においての結論の正しさを支える大前提は帰納法によってのみ成立しているのである。ページ140
結論から言うと、「2つの正しさ」とは、”客観的正しさ”と”論理的正しさ”である。ページ142
…では客観的に正しいことを結論としているために妥当な論理展開、すなわち「ロジック」に加えてさらに必要なものは何か。「ロジック」と言う必要条件に加えて、どのような十分条件が揃っていなければならないのか。答えは「ファクト」である。「ファクト」と「ロジック」が両方揃ってこそ、われわれは客観的に正しい結論を得ることができるのである。ページ146
「現実的に正しいことだけが正しい」と言うことである。先に説明した3つの要件を満たしたファクトとロジックに基づいて得たつもりの結論であっても、もし現実的事実と齟齬があれば、その結論は当然正しくないのである。ページ150
分析と言う言葉は、いずれの文字も「分ける」と言う意味である。「分」は分けることそのものである、「析」”木を引き裂く”が語源で、その意味は「裂いて部分に分ける」ことである。このように「分析」の主要概念を「分ける」ことにある。ページ152
このように「分析」とは”分けてわかるための実践作業”なのである。ページ153
実践的行為としての分析は分析の本質である要素に分けることに加えて、3つの要件からなることがわかるであろう。すなわち①目的の存在、②情報収集の必要性、③意味合い(インプット)がアウトプットページ154
「構造化」は最も重要な分析のコアプロセスであり、分析対象を的確に構造化して理解することによって、実践的分析作業における”目的を満たす意味合い(メッセージ)”を得る上でも大きなメリットを得ることができるのである。ページ159
実際の分析作業は基本的に、分析のプロセスの設計、情報収集、情報分析、意味合い(メッセージ)の抽出と言う4つのステップで行われるが、基本的動作における勘所とでも言うべきポイントについて解説していく。ページ163
実践的分析作業のプロセスが設計を行うにあたって、考慮しなければならない事項3つある。分析作業に課せられた制約条件の第一の事項。そして、具体的作業として何を行うかについての作業計画は第二の事項。そして、分析作業を通してどのような分析成果が得られるのかをと言うアウトプットイメージが第3の事項である。ページ164
具体的に内在的な制約条件とは、「時間」「手間」「費用」の3つである。…外在的な制約条件は、分析の「目的」と「期限」である。ページ166
どのくらいの時間や手間を情報収集に当て、また集めた情報の分析にどれくらいの時間や手間を投入すべきかのバランスが適切でないケースが非常に多い。ページ169
「情報」の定義を示しておこう。「情報」とは、「不確実性を減ずるもの」である。もう少し厳密に定義すると、「当為者の目的に対して不確実性を減ずる意味内容」のことである。ページ173
…「情報の効用低減性」である。ある分析目的に対して不確実性を減じてくれる情報であっても、集めれば集めるほど良いと言うものではない。ある分析対象に関する情報集めていくプロセスにおいて、追加的1情報あたりの不確実性低減への貢献度は逓減していく性質があり、ある一定水準以上になるといくら情報追加しても不確実性は減じなくなってしまう。ページ175
集めた情報データから、例えば因果関係の存在や事象固有の際立った属性といった優位な意味合いを的確に抽出するための手立てが必要となる。その手立てとして最も有用なのはデータの「グラフ化」である。ページ180
「グラフ化」の最も重要な原則は、2次元で描かれるグラフにすることである。ページ184
2つの変数を扱う典型的なパターンは、棒グラフ、線グラフ、点グラフの3種類である。これに変数が1つの場合に使われる円グラフを加えた4つのグラフが最も代表的なグラフのパタンである。ページ186
グラフから読み取るべきデータが持つ意味合い、すなわち分析対象特性は、グラフ上では「規則性」と「変化」と言う形で表出する。ページ192
”規則性を破る”変化には、2つのタイプが存在する。2つの変化のタイプとは、「突出値」と「変曲点」である。ページ198
このように「突出値」や「変曲点」の発見は、その後の工程として”なぜ突出してるのか””なぜ変曲してるのか”を判明させてこそ、現実的に有用な意味合いメッセージにつながるのが特徴である。ページ200
次の段階へと次々と深掘りしていく「執着心」が、有効でレベルの高い分析結果をもたらしてくれるのである。ページ235
実際の分析作業において価値ある成果を得るための鍵を握っているものは「執着心」と言う極めて精神的、心理的なパタンである。ページ236

銘酒誕生物語 今田酒造

 銘酒誕生物語(wowwowオンデマンド)を視聴しました。広島県東広島市安芸津の今田酒造(富久長)の物語です。5代目、今田美穂氏が跡取りです。女性の跡取りは珍しいのですが、長男が医者になったため、長女の美穂さんが明治大学卒業後、デパート勤務、イベントの裏方仕事の後、蔵に戻りました。活発で、きわめて聡明な方です。
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140年前から40年ほど使用された八反草という米で酒造しています。八反草は、山田錦の原種です。
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影響力の武器(説得の秘訣)

「影響力の武器(説得の秘訣)」を読みました。これは名著です! 心理学を実生活に活用するための本です。他人にだまされないように、逆に、思うような結果を出すための人間の心理を分析しています。常識や経験に照らしても納得できる内容です。セールスマンや詐欺師が巧みに心理の穴を突いてくるて手練手管がよくわかりました。自らの販売や説得に利用したこともあるし、だまされたことも度々です。メカニズムはよくわかりましたが、利用するかどうかは、目的によりますが…。
スポーツ観戦に熱中しすぎる人は「パーソナリティーに隠れた欠陥、つまり否定的な自己イメージがある人々」というのは卓見です。また、「革命の担い手となりやすいのは、…生活の味をいささかなりとも経験した人々…当てにしていた経済的・社会的改善が突然手に入りにくくなったときに…武力蜂起してそれを確保する…」その通りかもしれません。備忘します。

セールスマンがもっと多くの利益を上げようと思うなら、高価な品を先に見せるべきです。そうしないと、コントラストの原理の影響力を利用できないばかりでなく、その原理のせいで商売がやりにくくなってしまいます。安い商品を最初に見せて次に高い商品を出すと、客はそれをいっそう効果に感じてしまうのです受けた恩実に将来必ず報いなければならないと言う義務感です。人類に広く共有され、しっかりと根付いているこの恩返しの気持ちは、人間社会の進化に非常に大きく貢献してきました。ページ36
返報性が、他者からの承諾を引き出す手段として、これほど効果的に使われる理由の1つは、その威力にあります。このルールには恐ろしいほどの力があり、相手に借りがあると言う気持ちがなければまず断るような要求でさえ、受け入れさせてしまうのです。ページ43
私が承諾する可能性を高めることができます。まず確実に拒否されるような大きな要求を私に出します。私がそれを拒否した後、それよりも小さな、あなたがもともと受け入れて欲しいと思っていた要求を出すのです。これらの要求を上手に組み合わせて提出できれば、私は2番目の要求を自分に対する譲歩だと考え、こちらも譲歩しなければと言う気になり、2番目の要求を受けるでしょう。ページ68
一度、自分の立場を明確にすると、行動やその立場と一貫させようとする強い力が自然と生じます。私たちは、情報が少ない段階で行った予測的な判断にも影響受け、最終段階の決定をその予備的な判断と一貫させようとします。ページ112
最初に小さな要求を飲ませ、それから関連するもっと大きな要求を通すと言うやり方には、「段階的要請法」という名が付いています。ページ119
社会学者によれば、人は自分が外部からの強い圧力なしに、ある行為をする選択を行ったと考えるときに、その行為の責任が自分にあると認めるようになります。ページ150
承諾先取り法には様々な種類がありますが、基本的な手口はどれも同じです。まず相手にとって有利な条件を提示し、喜んで買うという決定を誘い出します。そして、決定がなされてから契約が完了するまでの間に、もともとあった有利な購買条件を巧みに取り除くのです。ページ159
社会的証明の原理です。これは、人は他の人たちが何を正しいと考えているかを基準にして物事を判断するというものです。この原理が特に適用されるのは、どう行動するのが正しいかを決める時です。特定の状況で、ある行動を遂行する人が多いほど、人はそれが正しい行動だと判断します。ページ189
特に自分で確信が持てないときには、群衆の集合的知識を過度に信用してしまいます。…群衆の示す行動は誤りであることが非常に多いです。なぜなら彼らの行動は何らかの優れた情報に基づいているわけではなく、彼ら自身もまた社会的証明の原理に反応しているだけだからです。ページ258
私が知っている限りでは、好意のルールを最もはっきりとした形で商売に利用している例は、タッパウエアパーティーです。私はこれこそ承諾誘導の古典的な舞台装置だと思います。ページ269
力のある人の方が、他者との付き合いでは有利になると言うのは、一般によく知られている事ですが、最近の研究によれば、どうも私たちはその効果の大きさと影響が及ぶ範囲をかなり過小評価しているようです。ページ276
私たちは自分に似てる人を好みます。この事実は、意見や性格特性、経歴、ライフスタイルなど、どのような領域の類似性においても当てはまるようです。したがって、私たちから好意を獲得し、言うことを聞かせようとする人が、様々な方法で私たちと似てるように見せかけてその目的を達することができます。ページ280
…私たちが、おめでたいほどお世辞に弱いということです。…一般的にいって、私たちは他者からの賞賛を信じ、それを言ってくれる人を好む傾向があります。ページ284
栄光に預かる事を望む気持ちは、多かれ少なかれ誰にでもありますが、あまりその傾向が強い人たちには、何か特別な理由があるように思われます。彼らはどのような人たちなのでしょうか。私の推測が間違っていなければ、彼らはスポーツの熱烈なファンと言うだけではなく、パーソナリティーに隠れた欠陥、つまり否定的な自己イメージがある人々なんです。心の深層に、自分は価値が低い人間だと言う気持ちがあるため、自分自身の業績を高めて名声を得るのではなく、他者の業績との結びつきを形成し、それを強めることによって名声を得ようとするのです。こうした人たちは実に多種多様で、私たちの文化のいたるところで目にお目にかかります。有名なミュージシャンと1時間付き合っていたと友人に言いたいがために、自分の性的魅力を売り物にしているのです。ページ318
権威者に対して自動的に反応する場合、その実態にではなく権威の単なるシンボルに反応してしまう傾向がある。この点に関して、効果のあることが実験で明らかにされている3種類のシンボルは、肩書、服装、自動車である。これらにより多くの相手に言うことを聞かせることができた。常にどの事柄においても、言うことを聞いた人たちは、自分の行動に及ぼす権者の影響力の効果を過小評価していた。ページ371
検閲に関してなされた数少ない研究の結果は、概ね一致しています。ほとんど例外なく、ある情報の入手を禁じられると、私たちは、いっそうその情報を求めるようになり、その情報をより好ましく思うようになるのです。元にされた情報がその受け手にもたらす効果について…興味深いのは、情報の受け手が情報を受け取ってもいないうちから、その情報を信じるようになるという点です。ページ398
革命がもっとも起こりやすくなるのは、改善しつつあった経済・社会的状況が急激に悪化の方向に転じたときなのだそうです。したがって、とりわけ革命をおこしやすいのは、虐げられてきた人々ではありません。革命の担い手となりやすいのは、よりよい生活の味をいささかなりとも経験した人々なのです。彼らが経験し、当然のものと当てにするようになった経済的・社会的改善が突然手に入りにくくなったときに、彼らは以前にもましてそれを欲するようになり、ときには武力蜂起してそれを確保しようとします。ページ405
気まぐれに特権を与えたり約束事を押し付けたりする親と言うのは、我知らず子供たちに自由を与えているので、反抗招く結果となるのです。たまにしか感触を禁じない親は、子供たちが、そのようなお菓子を食べる中を作り出しているのかもしれません。子供からすれば、取り上げられているのは自動で所有したことのない権利ではなく、既に持っている権利だけです。政治的自由…の例で見てきたように、人々は、前から貴重であったものよりも、あなたに手に入れにくくなったものを望ましいとみなします。ですから一貫性のない矯正やしつけをする親の子供は大抵反抗的に育つと言う研究結果があるのも別段驚くべき事ではありません。ページ410