サド・ディドロ・ラクロ

「サド・ディドロラクロ」(週間朝日百科 世界の文学5)を読みました。サドの名前は知っています。サディズムの語源でおぞましい小説(「悪徳の栄え」など)読む気はしません。悪徳を描くことで、善美が強調されることに気がつきもしませんでした。カトリーヌ・ドヌーヴ「昼顔」を観るぐらいは、よいかもしれません。「ファニーヒル」が発禁の娼婦小説だとは知りませんでした。「マノン・レスコー」の究極の愛の話は知っていましたが、とんでもない女だとは知りませんでした。ただ、これらの小説を読む勇気は湧きません…
f:id:tao-roshi:20210202194514j:plain

人工知能の哲学

人工知能の哲学」を読みました。途中で何度も内容を要約してくれるのでとても分かりやすいと感じました。素人に解るように書くのは相当の力量です。著者はとても親切です。人工知能を考えるということはヒトを考えることだと納得しました。人工知能がヒトの仕事を奪うこともないし、自動運転は実現しないと示唆しています。現在人工知能といわれているものは「道具」に過ぎません。人間の本質は「目的を決めること」で、身体を持たない人工知能ではヒトの代わりはできません。ヒトは錯覚するからこそ認識できるし、場当たりだからコミュニケーション(振動論)できることを理解しました。良書です。備忘します。

人工知能の哲学

人工知能の哲学

機械と人間の違いは、自分で目的を決めることができるかどうかに尽きる。現在、機械を利用することによって、多くの作業ができるようになった。しかしながら、何をすべきか、どこへ行くべきかといった目的は、人間にしか決めることができない。ページ32
私たちの脳は騙されている。しかし、騙される(錯覚する)という事は、主観的に世界を作り出すからこそ、私たちは、世界がどんな状況であっても、安定した認識を行うことができると考えられる。ページ68
言語コミュニケーションの中枢が身体の運動をつかさどる運動野にあると言う事は、コミニケーションと体は表裏一体であると言う裏付けとも解釈でき、非常に興味深い。ページ85
…生物それぞれから見た世界である「環世界」は、「主体」を持つ私たち生物の身体感覚を始めとする感覚器官を通して、私たち生物の脳内で作り出す世界であり、私たちが世界を認識するという事は、脳内で「イリュージョン」を起こしていると解釈できるのである。そして、「イリュージョン」なしに、世界の認識というものは、起こり得ないのである。ページ114
…自己自身の歴史という「場」を、自己自身で持つことが自己を自己たらしめるものであり、「主体」という考え方に通じるものではないかと考えられる。ページ124
こうした個々のリズムを通して全体が1つの生命を奏でる現象は、私たち生物が、進化の過程を経て発達させてきた社会性と大きな関係がある。私たち生物がコミニケーションを行う事は、自らの身体感覚を通して、他者の行為の意味に対して共鳴し、それによって他者世界を作り出していくことである。リズムを共有するという事は、こうしたコミニケーションを成り立たせる根本原理なのではないかと思う考えられる。ページ140
生命の至るところで観察される振動現象は、人間や細胞を含む生命における社会性や秩序といったものを成り立たせる根本原理であると考えられる。ページ163
人間のような知能、すなわち「強い人工知能」は、未だ実現されていない。しかしながら、「弱い人工知能」というものはすでに多くのものが実現されているということになる。ページ178
重要なのは、現在私たちが用いている人工知能と言うものは、あくまで、人間の知能の代わりの一部を行う機械である「弱い人工知能」であり、人間にとっての道具に過ぎないということである。この考え方を軸として持っておくと、世の中の様々な論理を、冷静に見つめ直すことができる。ページ190
私たちが世界を認識できるのは、私たちが身体を持つからである。機械にとっての意味は、こうした身体を中心に置いた考察が不可欠であろう。そして、身体を中心に置いた知能の考察が、本書で行ってきた議論である。私たちにとっての意味とは行為の意味であり行為を行うには身体が不可欠である。身体にとっての意味は、身体と環境との関係によって、即興的にその場その場で作り出される。ページ208

梅原猛訳「古事記」

梅原猛訳「古事記」を読みました。練れた日本語訳です。「古事記」は歌謡であると論じています。特に本書は歌の訳が秀逸です。これまで読み飛ばしていた歌を丹念に詠むことができました。
「神風の 伊勢の海の 大石に 這いもとほろふ 細螺の い這ひもとほり 撃ちてし止まむ」
(訳:神風の吹く伊勢の海の大きな石を這い回ってるヤドカリのように、敵の周囲を這い回って、さんざん撃って殺してやろう)(ページ99)
古事記」原文(岩波文庫ワイド版)を参照してみると省略している部分がかなりありますので、その点を考慮して読む必要があります。
解説「古事記に学ぶ」で、「古事記」原作者を柿本人麻だと推定しているのには驚きました。またアイヌ語との類似性に言及しています。
参考文献は、「口語訳古事記」(三浦祐之)、「古事記講義」(三浦祐之)、「古事記の物語」、「古代史研究の最前線 古事記」、「古事記の不思議な1300年史」、「ぼおるぺん古事記」、漫画「古事記」(青林堂)「マンガ古事記」(河出出版)などです。

古事記 増補新版 (学研M文庫)

古事記 増補新版 (学研M文庫)

ゲーテ・グリム兄弟

ゲーテ・グリム兄弟」(週間朝日百科 世界の文学4)を読みました。ゲーテファウスト」を誤読していなかかったことに安堵しました。青春を取り戻したいという発想は老人の発想ではないと思っていましたが、ファウストの初稿は20代とのこと、納得できました。第二部が経済の物語であり、現代資本主義の勃興期の混乱を描いていることもよく分かりました。誤読していませんでした。ベートーベンの第九「喜びの歌」はシラーの詩だったことを知りました。f:id:tao-roshi:20210128163012j:plain

スウィフト・デフォー

「スウィフト・デフォー」(週間朝日百科 世界の文学3)を読みました。「ロビンソンクルーソー」「ガリバー旅行記」の解説です。両作品とも、子供向けの読み物だと思っていましたが、さにあらず、批評と皮肉交じりの辛口小説です。ロビンソンクルーソーは、資本主義の原型を示しています。当時の紙幣の誕生の混乱を背景に経済活動の原点を表現しています。この頃から、紙きれが、信用と契約によって価値を生む時代がはじまりました。また宮崎アニメ「天空の城ラピュタ」の原典が、ガリバーの「飛行島」が原典であったことを恥ずかしながら知りませんでした。小説では、ガリバーは日本にも来たとされています。
f:id:tao-roshi:20111017211842j:plain

セルバンテス・ラブレー

セルバンテスラブレー」(週間朝日百科 世界の文学2)を読みました。ドン・キホーテはオーディオブックで何度か聴きました。内容は知っているつもりでしたが、サンチョはだだの脇役だと思っていました。誤読です。
「死の床に横たわった彼がサンチョに向かってそれまでの愚行をわびると、泣きべそをかいたサンチョが主人を励まし、また二人で旅に出ようというのである。何とも美しい場面だ。このように人間が人間との接触によって、あるいは自分の置かれた環境によって変わり、大きく成長しうること、これこそドンキホーテの大きなテーマのひとつといえよう」(2-060)
ボッカッチョ「デカメロン」はさわりだけ読みました。読破は難しいにしても、フェリー二の映画「デカメロン」を視聴しようと思います。
f:id:tao-roshi:20210125152706j:plain

シェイクスピア・ラシーヌ

シェイクスピアラシーヌ」(週間朝日百科 世界の文学1)を読みました。シェイクスピアが世界一の劇作家だというのは知っていますが、「ロメオとジュリエット」以外は記憶が錯綜していました。「テンペスト」は全く知れませんでしたが、先住民と征服者のストーリーに惹かれました。また、当時のヒロインが少年俳優だったというのは驚きでした。
f:id:tao-roshi:20210124174737j:plain