「私の生活技術」 アンドレ・モロア

人間の仕事には千差万別だとはいえ、働く人には、すべてに共通な心得がある筈である。

(イ)手に合いそうな仕事のうちから選ばねばならぬ。…人間の力と知性には狭い限界がある。何もかもしようとする人は、何一つとしてなすことがないだろう。…まず最初に始むべきものは、別にして置いて、ありつたけの注意をそれに向けねばならない。なすべきことをなせ。Age guod agis. それを一心こめてなせ。心身ともにそれに捧げよ。…人好きのする人は、あらゆることに興味をもつが、物事をなす人、仕事をやり遂げる人とは、ある一定の期間は、一つのことにしか興味を持たぬ人のことである。

目標の原則と一点集中突破の考え方です。天才ならいざ知らず凡人はこれしかないと実感しています。…2004年1月27日


(ロ)必ず成功すると信じねばならぬ。…軽はずみな若者は、何事も与し易しと思いこんで、そのうちにはっと気がつくと、これは飛んでもないことになったといったことになり、怠けものは、何も出来ないと思い、ことをやろうとせぬうちに諦めてしまう。よき働き手は大きな仕事も可能だと知り、用心ぶかくそれを徐々に完成する。

継続の重要性を言っています。成功を信じることによって継続することができます。私は怠け者ですので、仕事にすぐ飽きてしまうのですが、この文を思い出して気をとりなおします。


(ハ)仕事には規律が必要である。…したがって、仕事をする人にとっては、時を喰うものすなわち、モンテルランのいわゆる時殺し、モリエールの「厄介もの」を斥けることが一つの義務である。

仕事の能率を下げる最大の原因は中断だといっています。つまらない人に会う時間を惜しみなさいと言ってます。振り返ると、優れた人に会うためには自分が優れた人にならなければなりませんが、そこにいくまでどうしたらよいのか昔も今も悩んでいます。 2004年1月29日


(ニ)…しかしわれわれは次の二つの尺度を心に銘じて遵守するべきである。第一の尺度は、下らない、或は大袈裟な感動にひきずられて、仕事から面をそむけてはならないことである。第二の尺度は、あらゆる犠牲を払うにたるほど重要な仕事のためなら、あらゆるものを犠牲にすることである。

「飲む、打つ、買う」などの誘惑に気をつけるように言ってます。また優先順位、ウエイト付けのことを言ってます。普段重要なことから片付けることを心がけているのですが、現実は緊急度の高いものを優先しがちです。重要度が高く緊急度の低い仕事をつい忘れてしまいます。反省です。


(ホ)偉大な働き手は、すべて或はほとんどすべて、折おり仕事から引きさがる心得を持つ人である。…おお孤独よ、お前のみが余を弱めなかつたとつけ加えねばならぬ。

こころの健康を言っています。張りすぎた糸は切れるからです。仕事に一生懸命なあまり、こころの壊れた人をたくさん見てきました。たいへん重要な戒めだと思います。 2004年1月29日

私の生活技術 (1978年)

私の生活技術 (1978年)