現代語訳 学問のすすめ

「現代語訳 学問のすすめ」を読みました。「天は人の上に人を造らず,人の下に人を造らずと云えり…」、明治時代のベストセラーです。すでに今の大学生は本書をほぼ100%読んだことはないし、原文も読めなくなっているそうです。私にしても学生時代にはじめの部分くらいは読んだことがありましたが、通読ははじめてです。真っ当なことを真っ当に論じているので、むしろ驚いてしまいました。忠臣蔵の結着に対する法的な意味など、鋭い分析に感服しました。備忘します。

学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)

学問のすすめ 現代語訳 (ちくま新書)

もしも、国民の徳の水準が落ちて、より無学になる事があったら、政府の法律もいっそう厳重になるだろう。もし反対に国民が皆学問を志して物事の筋道を知って、文明を身につけるようになれば、法律もまた寛容になっていくだろう。法律が厳しかったり寛容だったりするのはただ国民に徳が有るか無いかによって変わってくるものなのである。(19ページ)
そもそも事を成すにあたっては、命令するより諭した方が良く、諭すよりも自ら実際の手本を見せるほうがよい。一方、政府はといえば、ただ命令する力があるだけなのである。諭したり手本を示したりと言うのは、民間でやることである。 (58ページ)
…政府の保護を受けて、泥棒や強盗の心配もなく、 1人で旅行しても山賊に遭う恐れもなく、安穏とこの世を渡っていけるのは、非常に便利なことではないか。およそ世の中に、何がうまい商売かといって、税金を払って政府の保護を買うほど安いものはない。(95ページ)
…義士も権助も共に命の捨て所を知らないものといってよい。…私の知るところでは人民の権理を主張し正しい道理を訴えて、政府にせまり、その命を捨てて死ぬところで死に、世界中に対して恥じることのない人間は、古来、ただ佐倉宗五郎があるだけだ。(102ページ)
… 10代の若者たちよ、他人の仕事を見て物足りないなぁと思えば、 自分でその仕事を引き受けて、試しにやってみるのがよい。他人の商売を見て、下手だなぁと思えば、自分でその商売を試してみるのも良い。隣の家がだらしない生活をしていると思えば、自分はしっかりと生活してみよ。他人が書いた本を批判したかったら、自分でも筆をとって本を書いてみよ。学者を評しようとするなら、学者となる。医者を評しようとするなら、医者となれ。(215ページ)