失敗学と創造学

「失敗学と創造学」を読みました。数年、管理職セミナーで著者の話を直接聞きました。雪印事件や東日本大震災の失敗を含め、実に興味深い内容でした。早速、研修用に購入したと記憶しています。マニュアルは作る人の研修効果が高いこと、失敗報告書は、事実の羅列では役に立たない、背景が大事だとのこと。例えば、その日の朝、夫婦げんかしたので気分が悪かったとかの情報が重要だと話していたのが印象的でした。フールプルーフとフェイルセーフ、肝に銘じました。備忘します。

失敗学と創造学―守りから攻めの品質保証へ

失敗学と創造学―守りから攻めの品質保証へ

失敗学や創造学の最大の主張は、自分で考えようと言うことである。必要なことを当たり前に考えようと主張しているのである。ページ5
広義のコンプライアンスは法令の条文のみならず法令の精神に学び、それを遵守することにある、あるいは、もっと広範囲を広げて法令のみならず、社会通念や倫理を尊重することなのである。ページ6
ここでマニュアルや伝言ゲームの問題点を説明する。①マニュアル通りにやっていれば大丈夫だというマニュアルを使う側の気持ちがいけない、②そこに書かれていることがどれほど重要なことかが伝わらない、③原理や理由、メカニズムが伝わらない、④順番の重要性が伝わらない。ページ11
失敗情報を文章にして残す時や伝達する時、あるいは根本原因を考察するときに重要なことがある。「背景や脈絡を書く」ということである。ページ17
人は上位概念である知識に上る時「つまり」という言葉を使うのである。下位概念である事例に降りてくる時、「例えば」と言う言葉を使うのである。ページ25
下位概念である事例から上位概念である失敗知識に登り、再び下位概念である仮想失敗に降りてくれば未来の想定ができるようになる。ページ32
ほとんどの行動に設計はつきものである。今、達成したい事柄があってそれをうまく実行しようとするのだからうまくいくように考えるのは当然である。これを筆者は正の設計と呼んでいる。それに対してほとんどの人は行わないのは負の設計である。まずいことが起こらないようにあらかじめ考えて設計しておくという設計をやる人は少ない。ページ35
…さて負の設計が重要であることに同意していただいたとして、ではその手法にはどんなものがあるだろうか。… 1つはフールプルーフである。…産業界では「ポカよけ」とも呼ばれている。もっと簡単に言えば「馬鹿が近づいても大丈夫なように最初から設計しておけ、あるいは間違えられるものなら間違えてみろ」という重要な設計精神である。…重要な設計推進の2つ目はフェイルセーフである。フールプルーフが100%成り立たない時もある。仮に成り立ったとしても設計者が同時に仕込んでおくことがこのフェイルセーフである。簡単に言えば「仮に間違えてかけても、あるいは間違えたとしても、必ず安全な方向に作用するから大丈夫」という設計精神である。ページ39
失敗情報の機能を果たしているか否かと言うのは、次のような判断基準で考えればすぐ見分けがつく。原因防止策のところを読んだ人が、・これは自分もやりそうだなと共感を持てるか、・自分がその状況に陥ろうとしてる時まさにその時「今の自分の状態は、昔読んだの過去トラに似ているぞ」と気づきを与えてくれる言葉になっているか、と考えればわかりやすい。ページ70
…人間行動は正常事は検出→認知→判断→行動と言うプロセスで行われ、異常発生時は、ヒヤリハット検出→認知→判断→行動と言うプロセスで行われる。そして、ヒューマンエラーを防止するときに、このプロセスのどこにチェックリストを設けるか、どこを自動化すれば効果的かということが議論されることが多いと説明した。ページ87
「失敗学」の大きな主張に、”小さな失敗は経験して、その経験や体験から知識を獲得し、それを利用して大失敗だけは未然に防止せよ”と言うものがある。その意味では、筆者の予防と言うのは大失敗の予防である。小さな失敗にまでヒヤリハットすら起こすなと言っているのではない。ページ88
マニュアルや自動システムを作る人は賢くなるが、それを使う人はバカになるの法則である。ページ90
上位概念に相当するのが、創造学では要求機能であり、失敗学では失敗知識なのである。ページ147