毒舌、身上の相談

今東光「毒舌、身上の相談」を読みました。昔、週刊プレーボーイに連載していた「相談」をリアルタイムで読んでいました。今読んでも抱腹絶倒、意味もよくわかるようになりました。人生の機微、辛酸をなめた人のありがたいアドバイス満載です。小説家にして、画家、宗教家にして政治家、マルチな才能で駆け抜けた怪人だと思います。ワクワクして一気に読み終えました。備忘します。

…昔から、官吏、宗教家、教育者、警官の子供には一番問題児が多いといわれているくらいでね。警官も官吏だからだめだ。ページ88
年寄りと言うものは、歳をとれば、よほど意地悪くなって、頑固になって、箸にも棒にも掛からなくなる。だから俺は昔から福祉なんて必要ないんだよと言っているんだ。…年寄りは何にも人類に貢献することがないからだ。…余生を楽しみたかったら、…俺は福祉なんていうのには根本的に反対だ。尊敬できる老人なんてごく少数で、後はみんな邪魔者だよ。ページ95
事業の成功は、資金なんてもんじゃなく、そこで稼いでいって貯めていって、常連がついてきたりして店が大きくなって、それから初めて店を持つんでね。全然夢みたいなこと考えてるだけじゃ、ちっともらちあかんよ。ページ98
俺はお前の言うことを聞いてて、最も申し情けなくなるのは、どうしてそんなに友達が欲しいのかっていうことだ。友達なんていりゃあしないよ。自分が立派になりゃあ、向こうから友達になってくれと来るんで、友達なんてものは、いくらたくさん持っていたところでいざとなって役にたつっていったらひとりもいないもんだ。友達なんていうものはそんなもんでね。ページ106
人間は死ぬ瞬間まで、死なんて考えるもんじゃない。「坊主が死を見つめて」なんて言うけど、そいつは馬鹿だね。死ぬなんて、死ぬまで分かりはしないもんだ。ページ118
”男の優しさ”って、これは理解と同情を持てる人のことだよ、老若男女にかかわらず、というのは、よく「理解」と「同情」って並べるけど、これは同時じゃないんだ。必ず「理解」が先で、それから「同乗」が生まれるんで、「理解」しなければ「同情」なんかわかないよ。この「理解」と「同情」が幅広くできる人、そういうのが本当の男の優しさなんだ。ページ132
俺が本を読め、本を読めと薦めるのは、それを栄養にするわけじゃないんだ。本を読めばいかに世の中にバカが多いかということがわかるからでね。本を読んでいても常に自主的にものを考えるんでないと逆効果になるんだ。ページ156
だから、お前も生涯に、自分がこいつのためになら命を投げ出しても惜しくはないというような友人を得るような立派な人になれ。そうすると、その友もまた、お前のために死んでもいいという人が出てくる。そういう友を、この人生、短い50年間80年間の間に1人も得られんという奴は馬鹿だ。良い友達を欲しいと思ったら、まず自分が良い友達になれ。ページ184
また仏教にもそんな教義なんて、何一つあり養いよ。とにかく確かな事は、死ぬために生きているっていう事だけだ。ページ180
こういう運っていうものは、努力するしないっていう問題じゃない、全く別のもんでね。また努力すれば必ず運が向いてくるっていう教訓自体が大変功利的で、俺はかえってだめだと思うな。それとこれとは別なんだ。ページ188