SDGs

SDGs」(岩波新書)を読みました。著者の一人、南博氏は2012~2015年、国連SDGs交渉を担当する日本政府の主席交渉官でした。交渉者が語る合意に至るプロセスは、ハラハラドキドキの圧巻のストーリーです。そして国連参加国、すべての国が合意に至りました。SDGsは、条約ではありませんが、政治交渉そのものプロセスに驚きました。せっかくの合意を無駄にするのは実にモッタイナイことだと思います。コロナやウクライナ紛争で滞りがちなSDGsですが、人類の未来に関わる問題はまだ解決していません。備忘します。

SDGsは)世界から貧困をなくすこと、現代の続かない持続不能な社会、経済、環境を続く持続可能な社会経済環境えと変革することを2つの柱とする。目標ページ1
(このままでは)地球は破壊されてしまうということを意味する。間接的にではあるが、環境に関して2030年アジェンダは緊急事態を宣言しているのである。ページ5
ゴール7から10までは、繁栄に関連づけられる。これらは世界が持続的に反映する基礎となる、持続可能な経済を作る目標である。ページ14
ゴール12から15までは地球に関連づけられる。すなわち、環境破壊により持続不能になりつつある地球環境を、持続可能な環境えと修復するための目標である。ページ15
残りの2つは、それぞれ1つのゴールに紐付いたものである。ゴール16のPに平和が挙げられているが、このゴールは平和のみならず、公正な司法へのアクセス、汚職不敗の防止、透明で能力の高い行政機関、参加に基づく意思決定など、むしろ、現代における国家および国際社会におけるガバナンスのあり方を提示したものとなっている。ページ16
…最後はパートナーシップである。包括的で参加型のパートナーシップはSDGsの精神の核をなすものだが、このゴール17が指すのは、後発発展途上国、小規模な島国や内陸国など、開発において不利な条件に置かれている国を含めて、地球全体で貧困をなくし、持続可能な社会経済環境に移行していくための開発資金、科学技術イノベーションと技術移転、能力の構築、貿易のルール、政策一貫性の確保等のパートナーシップである。ページ18
このように見てくると、17のゴールで形成されるSDGsの体系は、統合性と包括性の考え方に基づき、かなり緻密に構築されたものであることがわかる。ページ19
私たちは今ますます、のっぴきならないところまで追い込まれている。SDGsの変革のためにはもはや他の選択肢はない。ページ30
それ故、言い方は悪いけれど、SDGsの17のゴールと169ターゲットのうち自国に都合の悪いものは無視して、いいとこ取りができるようになっているからともいえる。ページ69
国際社会にとって国連の最も大きな意味を持つのは、そのコンビニングパワーであろう。適当な日本語訳がなかなか見つからないのであるが、人々を集める能力といったところであろうか。ページ72
日本のSDGsモデルの三本柱の中で、最も進んでいるのが日本目の地方創製SDGsであるが、これはとりもなおさず、日本の持続可能性を考える上で、地域の持続可能性の問題が最も困難であり、その分、注目されてもいるということを示す。ページ81
SDGsにこそ経済合理性があるのだということを、企業に対してスマートに示せれば、企業は動く。「企業も投資家も、中長期的に儲からないと1番困るんです。投資家の利害に同期しながら働きかけていくことが、企業を変える上でのコツだと思います。」ページ126
今後の持続可能な社会形成のための技術のあり方を、日本から打ち出すソサエティ5.0のビジョンのように最新技術の導入一辺倒の側に追いやるのではなく、市民が日々直面する持続不能の課題について、自分自身がオーナーシップを持って管理できる様々な技術を導入し、使いこなすことで解決していく「適正な技術選択」の側に引き寄せていく上でも重要な意義を持っている。ページ175
SDGsには危機を突破し、それを持続可能な社会に向けた変革につなげていくだけの力がある。その力の源泉は、その包括性と参加型民主主義によって、今までつながっていたことのない人々をつなげていくところ、つながった人々の力を新しいエンジンにしていけるところにこそある。ページ213