快楽消費する社会

「快楽消費する社会」を読みました。人ははなぜものを買うのだろうか、必要だから買うという答えでは説明ができなません。現代は買いたい商品を自分の欲求に従って選ぶ方が多いのではないでしょうか。本書では「快楽追求」のために買うと断じ、そんな多様な消費者行動の原点を説明しています。 備忘します。

消費生活場面で行われる行動のうち、商品の購入、使用、処分を伴う行動を消費者行動と呼ぶ。(9ページ)
「快楽」を「主観的に望ましい感情を経験すること」と定義する。(32ページ)
消費者は本来快楽を求める存在である。(59ページ)
現代日本の日常生活においては、快楽を得るための有効な手段として消費者行動がある。 (60ページ)
合理的な消費者行動と快楽消費は対立しない。合理的な快楽消費というものもある。(p.62)
1990年、バブルが崩壊した。消費者行動への影響はすぐに現れなかったが、次第に明確になってきた。買い控え傾向が強まり、バブル期のような派手な購買パターンは少なくなったのである。「消費意欲の減退」「消費の低迷」「消費不況」「消費マインドの冷え込み」などの言葉が消費者動向をあらわす言葉として用いられるようになった。ではなぜ消費者は買い控えするなったのだろうか所得が減ったから必然的に商品購入を控えることになったというケースもあるが、それより多いのは将来の不安があるためにできるだけ貯蓄に回そうとし、そのために商品購入控えるというケースである。とくに現世代では老後への不安が大きい。(91ページ)
以上のことから現在の科学消費は、バブル期に比て、金額の面では減少傾向にあるものの、種類の面ではむしろ広がりを見せてきたと言うそうである。今日が決め手となる快楽消費の時代から質が決め手となる快楽消費の時代へと変わってきたのである。ここで付け加えておきたいのは、現在のささやかな楽しみは喜びには、個人単位で経験するものが多いということである。行動単位が家族から個人へシフトした事は、消費者行動の全般的傾向としてはこれまでもしばしば指摘されてきたが、快楽消費に関しても言えることである。60年代に顕著であった、家族で快楽消費しようという姿勢は、概して弱くなっているようである。(95ページ)
健康維持や健康増進のための消費者行動などにも、快楽追求の側面を見出すことができる。例えば青汁を飲んだり、サプリメントを飲んだりする人が、なぜそのようなことをするのだろうか。本当に健康維持や健康増進に立っている場合もあるだろうが、それよりも体に良いと思うことによる満足感の方が、こうした消費者行動を続けさせる大きな原動力になっているのではないだろうか。つまり私たちは健康の維持増進のための消費者行動からも快楽を得ていると考えられる。(106ページ)
しかし現在の日本の高齢者イメージはかつての高齢者イメージとはずいぶん違っている。第一に、以前の高齢者に比べて、元気で若々しいイメージが強いように思える。…次に気づくのは高齢者の多くが消費中心の生活をしているということである。…高齢者とされる人の多くは、引退した人や引退した人の配偶者であって、定職を持たない場合、1日のうち多くの時間を消費者行動に費やすことになる。ゆとりがあるの時間だけではない。現在の高齢者を対して経済的ゆとりがあると言われている。これらを包括すると現在の高齢者は、健康であり、時間的ゆとりと経済的ゆとりを持ち合わせていると言えそうである。( 138ページ)
経済的ゆとりのある高齢者層が存在するということ自体は嘘ではない。しかし企業の側ではその割合を過大評価しているのではないだろうか。ひとたび経済的ゆとりのある高齢者に注意を向けてしまうと、実際にはつましく暮らしている高齢者がいても、見落としてしまいやすい。 …高齢者イコールリッチ、高齢者イコール不況の折にも積極的に商品を買ってくれそうな人、と決めつけるてしまうのは早計だろう。(143ページ)